はてなキーワード: VCLとは
数ある CDN のなかでも Fastly は圧倒的に優れた特性を持つものだと思うので、障害にかこつけてその優れた点を紹介していく。
CDN とは世界各地にあるキャッシュサーバーにコンテンツをキャッシュして配信してもらうことで、オリジンサーバーの負荷を軽減したりユーザーへの配信速度を上げたりするリバースプロキシのホスティングサービスだが、 Fastly の最大の特徴としてはそのキャッシュが消えるのが速い。普通の CDN が数十秒〜数分とかかるのにたいして 0.2 秒で全部消えることが保証されているし、キャッシュにたいしてキーをつけておけば(HTTP ヘッダーに Surrogate-Key って入れるだけ)特定のキーがついているキャッシュだけ 0.2 秒以内に消したりということができる。
これにより、 CDN による配信高速化の恩恵を受けながら、コンテンツをリアルタイムに更新していくことができる。 next.js + vercel などはこのあたりをフロントエンドから CDN まで一気通貫に提供することでリアルタイム風にコンテンツを更新できるように見せかけているが、 Fastly なら本当になにもかもリアルタイムで出来ることが保証されるので、難しいことを考えなくてもよい。
CDN の設定の反映の遅さというのは Cloudfront とか使っていれば感じることだと思うが、 Fastly なら 5 秒ぐらいで反映される。設定を変更しながらいろいろ検証しているときにこれが地味に嬉しい。
ただし上記の特性の代償と言えるのかもしれないが(そうではないのかもしれないけど)、 Fastly は「デカめの配信拠点を比較的少数配置する」という構成になっているため、ディザスタリカバリなどの面では不安がある(今回の障害はマジで全部落ちたのでこれとは関係ない問題だろう)。
Web 設定画面からいじれる設定項目が多く、にもかかわらずユーザーに優しく使いやすい。例えばリクエストヘッダーを Fastly 側で書き換えてもらう機能があるのだが、それとは別に Host ヘッダーのオーバーライドの設定は(えてしてよく使うので)別の画面に切り出されていたりする。
大抵のユーザーは Web からの設定画面でできることで満足すると思うが、高度な制御をしたい場合、 Varnish の設定ファイルのスニペットをアップロードしたり、あるいは設定全体を書いてアップロードする、といったことができる。例えば JWT のデコードを VCL でやってしまって、同じ URI にたいして認証済みユーザーとそうじゃない人でキャッシュのだしわけなんてことが Fastly 上でできるようになる。
ただし VCL でいろいろな制御を実現しようと思うと、 VCL の表現力の低さにより地獄を見ることになるので、得られるベネフィットと相談しながらこのあたりはやっていくことになる。