自分はなんで演奏するのを続けていたんだろう。いまとなっては分からない。
昔から練習熱心ではなかった。いまでも初心者に毛が生えた程度の技術しかないだろう。
演奏会やライブも楽しみではなかった。練習しない人間が本番良い演奏をできるわけがない。
むしろ怖かったとさえ感じる。間違ったらどうしようと怯え、失敗したことだって何度もあった。
もちろん間違えるひとだっているけど、あまりにその頻度が少ないように思う。
何時間か練習していれば自分ですら幾らかは覚えられるのだから。
きっと彼ら彼女らはほぼ毎日のように何時間も練習している。それがもう生活の一部なのだ。
それに間違いをごまかすのにも慣れているんだろう。
音を間違えてもグルーヴを乱さなければ演奏は成立すると誰かが言っていた気がする。
頭が真っ白になっても手を止めずにそれっぽい音を手癖で出せるようになりたかった。
でも自分にそんな情熱はなく、いつまで経っても下手なままだった。
アイドルになりたいというヒロイン達を見て、自分は暗い気持ちになった。
なぜ大勢に見られながらの一発勝負を自分からしたいなんて考えるのか。
間違えたら見たひとの記憶に残るし映像にだって残ってしまう。それが怖くないのか?
何十曲とあるらしい歌の踊りや歌詞をひたすらに練習して覚える情熱はどこからくるんだ。
まあこれはフィクションの極端な例を持ち出しただけかもしれない。
でも身近に視線を戻しても、社会人になっても音楽を続ける情熱あるひとは、自分とは何かが違う。
何か人間として根本的な部分での違いがあるような気がしてならない。
能動的に興味や趣味に大量の時間を投下することなんてできる気がしない。
憧れもないし一発勝負に挑戦したいとも注目されたいともいまでは全く思わないんだ。