彼の作画は素晴らしく、そして人気の理由は何よりもその緻密なストーリーにあった。
いつも読者を最後にはアッと驚かす意外な結末を作り出しては、人気を博していた。
しかしスランプに陥ってしまったのか、いつものような冴えたアイデアがまったく浮かばない。
どのような結末にすれば、読者をアッと言わせられるだろうか?
どうしようかと三日三晩悩みに悩み、考え尽くしてもアイデアは出ない。
そのうち疲れてしまってうとうとし始めると、気づけば眠っていた。
すると夢の中で天使が現れ、こう告げた。
「本当か!?では、読者を納得させられるような、結末のアイデアをくれ!」
「いいでしょう」
「…いいですね?最後の結末をこうしなさい。さすれば、願いはかなうでしょう…」
天使は全てを言い終えると、透き通るように透明になっていき、消えていった。
「なんだったんだ、さっきの夢は…」
これは啓示であると思った漫画家は、天使に聞かされた事をそのまま作品の結末に採用した。
後日。
作品は無事に完結した。
「いやあ、あの結末、評判が良いですよ!」
「そうなのか?」
漫画家は意外そうな声を出す。
「ええ!でも、まさか、あんな結末にするなんて、思いもしませんでしたよ!」
「私もだ」
「えっ?」
「いや、なんでもない。それにしても、本当に好評だったのかね?」
「それはもちろん!いやあ、大反響ですよ!あの結末は、さすがにどの読者も予想できなかったみたいですから!」
「だろうな」
「そうか…」
その結末はこうだ。
夢の中で天使は言っていた。
「人間というものは、誰もが似た体を持ちながら、ある特定の一人の裸を見たがるものなのです。いいですか?彼らにとっては、服の中身こそ最上のミステリーなのですよ。だからそれを描けば、たとえそこになにがあるか分かっていようとも、人間は満足するのです」
窓辺に歩み寄った漫画家は担当に訊ね、「ええ、どうぞ」と言われて、一本を吸い始める。
ありきたりな密室トリックや凶器のトリックは、古典的なものや有名なものを使用すれば大いに批判される。
しかし、女の裸となれば、下着の先には何があるのか分かっているくせに、それを描こうが文句は言ってこない。
まさに、それこそが最大のミステリーだ。