少年のボブは悪ガキだった
ボブはもともとこうだったわけではない
ボブが4歳になるまでは、とても真っ直ぐな心をしていた
ところが、ボブの周りには悪魔のような人たちがいた
孫娘を虐待するどこかのおばあさん、ボブに暴力をふるう同い年の子供、悪意を植え付けるテレビ番組
誰かが「優しさは本当の強さだ」と言うと、ボブは泣き虫だった3歳のときの自分を思い出した
ボブはどんどん自己中心的になっていった
ボブが高校生になり、インターネットを使うようになると、知識を得るようになった
しかし深く考えず、鵜呑みにした。これが世界なのか、生きる意味はなんなのか、とボブは落ち込んだ
ボブは幼き頃の真っ直ぐさとは程遠い、萎れた植物のように曲がっていた
ボブは安直に、簡単に死ねるならどんなによいことかと思ったが、死というもののなんともいえぬ恐怖により、なんとか生きていた
ある日、ボブは偶然、花屋に寄ろうと思った
「こんにちは」
「やあ、君は近所のボブくんだね。何がほしいのかな」
「いや、何というわけでもないのですが、植物を育てたくて。実は人生に迷っていて、生きるとは何かについて、知りたいんです」
「そうか、そういうことなら...」
「これを育てるとよい」
それは小さくて黒い、見た目はつまらないものだった でもボブはその種に何かを感じた。ボブは聞いた
「これはなんという植物ですか」
「これは善の知識の種と言うんだ。善の知識が芽吹き、花咲き、実を結ぶ。」
「善の知識ですか?」
「そうだ。これは古からの秘伝の種だが、君が生きるのに迷うなら育てると良い。育った植物が君に生きる意味を教えてくれるかもしれない。何が育つかは君の心次第だ」
「ありがとうございます。代金を支払います」
「お代は結構だよ。君がよく下を向いて歩いているのを見ていたから、私も心配だったんだ。だからプレゼントだ。賢く育てると良い」
ボブは部屋に鉢を置き、種を植えた
ボブは種に話しかけた
善の知識について教えてほしいと願った
ボブは種に歌を歌った
善の実がなるようにと祈った
やがて種は芽を出し、茎と葉を伸ばした
ボブは驚いて、芽にありがとうと言った
でも種はまだ何も話さなかった
ボブは不満に思って、種に怒鳴った
どうして善の知識を教えてくれないのかと責めた
芽はこう答えた
「善の知識はただ教えられるものではない。探し、見つけ、学べ。考え、判断、行動してみせよ。試し、失敗し、成長するのを私に見せよ」
ボブは納得しなかった、芽に反論した
探すなんて面倒くさいと言った
考えるなんて難しいと言った
行動するなんて怖いと言った
試すなんて無駄だと言った
芽はこう言った
「君がそう思うなら、私は君に何も教えられない。君がそう言うなら、私は君に何も与えられない。君がそうするなら、私は君と何も分かち合えない。君がそうするなら、私は枯れてしまうだろう」
ボブは気づいた、芽が弱っていることに
ボブは慌てた、種が死んでしまうことにボブは泣いた、種が消えてしまうことに
しばらくして、ボブは決心した
この芽の成長と共に善の知識を探そう、この芽と自分が萎れないように、潜んでいた悪の闇に飲まれないように、新鮮な光を当てよう
種も植えなければ育たない