2023-08-12

[]善の種

少年のボブは悪ガキだった

ある時は誰かをいじめ、また別の時はサイコホラーを楽しんだ

ボブはもともとこうだったわけではない

ボブが4歳になるまでは、とても真っ直ぐな心をしていた

ところが、ボブの周りには悪魔のような人たちがいた

孫娘を虐待するどこかのおばあさん、ボブに暴力をふるう同い年の子供、悪意を植え付けるテレビ番組

ボブは不条理さに飲まれ、もともとの善よりも力を欲した

誰かが「優しさは本当の強さだ」と言うと、ボブは泣き虫だった3歳のとき自分を思い出した

「優しいが強い?嘘だ。僕は優しかった。でも泣き虫だった」

ボブはどんどん自己中心的になっていった

ボブが高校生になり、インターネットを使うようになると、知識を得るようになった

事実「真実」意識」ボブはあらゆる言葉を調べた

しかし深く考えず、鵜呑みにした。これが世界なのか、生きる意味はなんなのか、とボブは落ち込んだ

ボブは幼き頃の真っ直ぐさとは程遠い、萎れた植物のように曲がっていた

ボブは安直に、簡単死ねるならどんなによいことかと思ったが、死というもののなんともいえぬ恐怖により、なんとか生きていた

ある日、ボブは偶然、花屋に寄ろうと思った

こんにちは

「やあ、君は近所のボブくんだね。何がほしいのかな」

「いや、何というわけでもないのですが、植物を育てたくて。実は人生に迷っていて、生きるとは何かについて、知りたいんです」

「そうか、そういうことなら...」

花屋店長は何かを取り出した。

「これを育てるとよい」

それは小さくて黒い、見た目はつまらないものだった でもボブはその種に何かを感じた。ボブは聞いた

「これはなんという植物ですか」

「これは善の知識の種と言うんだ。善の知識が芽吹き、花咲き、実を結ぶ。」

「善の知識ですか?」

「そうだ。これは古からの秘伝の種だが、君が生きるのに迷うなら育てると良い。育った植物が君に生きる意味を教えてくれるかもしれない。何が育つかは君の心次第だ」

ありがとうございます。代金を支払います

「お代は結構だよ。君がよく下を向いて歩いているのを見ていたから、私も心配だったんだ。だからプレゼントだ。賢く育てると良い」

ボブは部屋に鉢を置き、種を植えた

そして毎日水やりをし、窓からの光を当てた

ボブは種に話しかけた

善の知識について教えてほしいと願った

ボブは種に歌を歌った

善の実がなるようにと祈った

やがて種は芽を出し、茎と葉を伸ばした

ボブは驚いて、芽にありがとうと言った

でも種はまだ何も話さなかった

ボブは不満に思って、種に怒鳴った

どうして善の知識を教えてくれないのかと責めた

芽はこう答えた

「善の知識はただ教えられるものではない。探し、見つけ、学べ。考え、判断、行動してみせよ。試し、失敗し、成長するのを私に見せよ」

ボブは納得しなかった、芽に反論した

探すなんて面倒くさいと言った

考えるなんて難しいと言った

行動するなんて怖いと言った

試すなんて無駄だと言った

芽はこう言った

「君がそう思うなら、私は君に何も教えられない。君がそう言うなら、私は君に何も与えられない。君がそうするなら、私は君と何も分かち合えない。君がそうするなら、私は枯れてしまうだろう」

ボブは気づいた、芽が弱っていることに

ボブは慌てた、種が死んでしまうことにボブは泣いた、種が消えてしまうことに

しばらくして、ボブは決心した

この芽の成長と共に善の知識を探そう、この芽と自分が萎れないように、潜んでいた悪の闇に飲まれないように、新鮮な光を当てよう

種も植えなければ育たない

育とうとしたのを見たのだから無駄にしたくはない

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