十数年前、私が大学生のとき、東京都内のとある区で自転車撤去のバイトをやっていたことがある。区から直接雇われるわけではなく、区の下請け業者に雇われる形だ。
学生2人がトラックに同乗し指示に従い放置自転車をトラックに積み込む。
規定ではたしか勤務時間は9時から17時までで、日給が8,000円の現金支給だったのだが、これがものすごく割がよかった。
一日働いて8,000円ならばそんなに高額ではないが、実際は一日なんて働かない。
なぜかというと、撤去する自転車の台数がびっくりするくらい少ないのだ。
場所にもよるが、1日で1人が撤去する自転車はせいぜい数台、下手すれば2〜3台程度。それを十数メートル運ぶだけ。あとはほとんどトラックで移動や待機であって、何もしない。指定の場所までトラックに乗せてもらって、自転車があれば役所職員の指示に従ってトラックまで運び、乗せるだけ。
実動時間はせいぜい4時間程度。拘束時間は昼休みを含めば6時間程度だ。
午前もしくは午後のみ働くということも可能で、その時は2時間だけ働いて4,000円貰えるのだ。そういうときは自転車一台だけ撤去して適当に1時間トラックに乗って4,000円もらって解散なんてことも珍しくなかった。
これらの給料は区民の税金や、自転車を引き取りに来た人が払う撤去手数料などから出ているのだろう。
しかし、当時学生の私は、それを「不正だ!税金の無駄遣いだ!」なんて告発する気はなかった。いい歳した役所の職員も当然のように職務を行なっていた。
お金の前には正義感など無くなる。どんな仕事だろうが、お金が貰えてしまうのであれば、これが世の中なのだ思い、その金を受け取ってしまうものだ。
こんな些細なバイトですらそうなのだから、世の中のもっと上層にいる人間はどれだけ汚いことをしてカネを儲けているか、想像することは難くない。
何らかの仕事に従事することで悪いことを考えたり、愚民が真実に気がつくのを抑止する作用があるんだろうなぁ。(棒