当時私はまだ高校生になったばかりで、痴漢というものが存在することは知っていたけど実際に被害にあったことは無いし、電車通学を始めたばかりということもあって、そんなこともあるんだなくらいに考えていた。比較的田舎に住んでいたこともあって電車もそこまで混むこともなく、密着状態にはならないし、実際に痴漢を見かけることもなかった。
今でもはっきり覚えているけどその日はずいぶん暑い夏の日で、朝少し寝坊をしたのでいつも乗る電車を逃し、学校に遅刻するんじゃないか少し焦っていた。しかもそんなときに限ってお腹の調子が悪い。電車に乗ってる20分くらいの時間もいつトイレに駆け込むことになるんじゃないかと二重に焦る朝だった。
焦りつつもなんとか耐え、いつもの降車駅に着いて降りようとした頃、お尻を触られた、というより揉まれた?ような感覚があった。しかし、一瞬の事だったし電車を降りようとして誰かの手がぶつかったのかなくらいに考えてとりあえず電車を降りた。そんなことよりも一刻も早くトイレに駆け込みたかったのだ。
運良く駅のトイレは空いていて、なんとか耐えた安堵で一息ついていたら、今度はいよいよ本当に遅刻しそうな時間になってきたのでトイレを出る。するとこちらを見ている人がいるけど、なんだろうと思いつつも駅の外の駐輪場へ。というところで後ろから肩を叩かれた。
少し驚きつつも後ろを振り返ると、ニタァという感じの笑みを浮かべた人が立っている。私はちょっと恐怖を感じつつも何か御用ですかときくと、手にしていたメモのようなものを渡してくる。
急いでいたしあまり相手にしたくはなかったが、2つ折りになっていたメモを開いてしまったのが運の尽き。そこには、「一緒にオナニーしませんか?」と書かれていた。私は突然のことで完全にパニック。ここからはよく覚えてないのだけど、いや、いいです!!と全力でお断りしてダッシュで逃げた。ヤバイヤバイヤバイなんだこいつはと考えつつ駐輪場へダッシュ。自転車を出してきてとにかく学校へ逃げた。
無事?振り切って学校には着いたもののその日の授業は全く身に入らず、なんだったんだあれはと私は一体どこから目をつけられていたんだと1日中悶々。帰る時には同じ駅に寄らなきゃいけないわけだけど、その日は自転車を漕いで隣の駅から電車に乗って帰った。
少し落ち着いてから考えたんだけど、多分朝に電車降りる時にお尻を触ってきたのも同じ人だったんじゃないかと思うんだよね。それに気づいてさらに恐怖。
それからしばらくその駅使うのが嫌すぎてわざわざ隣駅から通うことになってしまった。駅のトイレもトラウマで使えなかった。
この話、親にも友人にも言えず何年も自分の中で抱えることになってしまって、今でもあの痴漢のニタァって感じの気持ち悪い笑みは思い出して割と怖いし、電車も駅のトイレも嫌なものになってしまったけれど、自分の中でそろそろ誰かに聞いてもらうかして消化した方がいいよなあと思って書いた。