昨年の後半から当店で働き始めた女子大生アルバイトさんは凄く可愛い。元から凄く可愛い女子大生アルバイトさんが、先日は髪を縦ロールに巻いて来たので凄く可愛いの二乗となり、いつも以上に男性客から構われていた。
そんな男性客の中にはかなりの割合で、女の子を誉める時に当店の他の店員や他店の店員をdisって女の子をアゲる奴がいるのだけれども、そういう誉められ方をすると誉められた女の子当人はかなり気分が悪い、ということは知られていない。そういう悪い誉め方は女の子にとっては心労のもとでしかない。
女子大生アルバイトさんが午後2時から夜の8時まで、みっちり六時間働いていることをAさんがいぶかしがっていた。大学生ってそんなに暇なんですか? と。その言い方に、客から可愛がられはしても理不尽に怒られることの少ない女子大生アルバイトさんへの妬みとか僻みがモリモリにこもっていて哀れだ。
去年、四ヶ月ばかりで辞めてしまった男子大学生アルバイトさんを引合いに出して、女子大生アルバイトさんをdisり出すAさんだった。男子大学生アルバイトさんは、男であるが故に客からもオーナーからも集中攻撃されて疲れ果ててしまったのと、本人いわく「大学の授業が思ったよりも忙しくてバイトとの両立が難しくなった」のを苦に、仕事に慣れてきた頃に唐突に辞めてしまったのだ。
女子大生アルバイトさんと男子大学生アルバイトさんのいうことが何から何まで矛盾していて、女子大生アルバイトさんは大学生活を手抜きしつつバイトは顔で渡って、楽してズルばかりしているのではないか? とAさんが口角泡を飛ばして女子大生アルバイトさんを空想で批判しだす。空想でそこまで怒るかよ。
男子大学生アルバイトさんの通う大学は、当店から車で片道最短四十分もかかる大学で、そもそもそんなに長時間を通学にかけていて長時間バイトするのは難しい。
彼は確か政治経済学部だということだった。政治経済学部の忙しさはどれ程のもんだか知らないけれど、今の大学で特に面倒見のいいところは一年次からダラケないようにカリキュラムを組んでるそうなので、高校生の延長みたいな暮らしぶりをする大学生というのは、今や珍しくはない。
一方で、昔ながらに学生の自主性に任せている大学ならば、学年によっては必修科目がほんの数科目しかなく、自分で時間割を調整してある年度は死ぬほど多忙だがある年度はすごい暇、という風にすることができるだろう。基本的に、一二年と三四年に分けて、自分の就活の都合に合わせてどっちかに暇を偏らせるものではないだろうか。
こういう点、大学に行ったことのない人に解ってもらうのは難しく、私も大学生時代には両親に時間割のことであれこれ文句を言われて、説得するの大変だったなぁ、なんて思い出した。