個人的には9話は非常に良かった。
アニメの場合、麻枝作品の特徴は前半で遊び過ぎて後半で尺が足りなくなるところにあると思うが、今作品ではまさかそれが良い方向に働くとは思わなかった。
9話はまさに、その尺合わせで急激に話が収束する回だったわけだが、その超展開に置いてきぼりになる視聴者の心理を、急な別れに途方に暮れる陽太の心理に合わせてきたのが非常に素晴らしかった。
つまり、視聴者が感じる超展開への驚きを、陽太が感じた超展開への驚きとリンクさせて、陽太の喪失感に視聴者が共感しやすい構造になっていたのだ。
これは、あの喪失感たっぷりの黒背景のエンドロールを見てわかる通り、偶然ではないのだろう。
だから、今作品は意図的に、視聴者が超展開にポカーンとなるように作ってきたんだと思う。この強い喪失感を共感させるために。
超展開を逆手に取ったシナリオ構造とでも言うのだろうか。それに結局、仮想世界だとかのギミックが思ったより弱く、シナリオをメイン二人の関係性に振ってくるのであれば、
愛を育む意味で、超展開の原因である前半のバタバタでは必須だったわけだし。その点では、しっかり作り込まれた超展開なのだと感じた。
これは前の2作とは大きく異なる長所だと思う。今作は、配信か何かで追い直して最後まで見る価値があると思える大事な回だった。
あと、最初はメイン二人の恋愛関係に話を持ってくるのであれば、ひなのキャラデザインはもっと大人びたものにすべきだったと思ってた。
京アニ板kanonのように、二人の関係性は兄妹にしか見えてなかったので、恋愛関係にあると言われても違和感を感じてしまうから。
しかし、それも超展開を感じさせる仕掛けの一部だったんだと思う。つまり、先の喪失感を高める効果だったんだと思う。よくできてる。