シムズ4というゲームがある。
キャラクターを作り、社会で暮らす様を誘導しながら見守るゲームだ。
キャラクター容姿や性格、家のデザインなど、様々なものを設定できるそのゲームにはまった私は、面白がって現実の家族を模したキャラクターを作り、一つの家に住まわせて家族としてプレイしていた。
自分と配偶者、そしてペットの二匹の猫。全員可能な限り現実の容姿に似せたため、モデリングに数日もかかった。
現実のペットのうち一匹は、数年前にボロボロの状態で保護をした子である。
うちに迎えた時点ですでに内臓疾患をかかえており、加齢もあってかはきはきと動くことは少なかった。
それがゲーム内では家中を走り回る。颯爽と家具に昇り、もう一匹の猫と喧嘩をし、もりもりご飯を食べる。
現実ではありえない元気な様子に和みつつ、楽しくゲームを進めていた。
ほんの数週間の間に段差を登れなくなり、排尿を失敗するようになり、ご飯を咀嚼できなくなり、
シリンジで流動食を与えるようになった頃には歩くことも出来なくなった。
辛かったろうに、亡くなる間際まで一緒に寝て、甘えてくれた。
夫婦で数日泣き暮らした後、久しぶりにシムズのデータを開いた。
年をとらない設定にしていたため、老けることも、死ぬこともなく、ずっとそのままの姿で。
そしてゲームの中の私は、以前と同じようにあの子と戯れていた。現実の私がもう抱けないあの子を撫で回していた。
あの子はまだこのデータの中では生きている、という思いもある。
だがゲームの中の私達を見て、感じたのは疎外感だ。
「あの子はゲームの中の家族のもので、現実のあの子はもうどこにも居ないのだ」という思いが強くなった。
辛くてそれ以上見ていられず、すぐにゲームは閉じた。
あの子が生きている世界だから、ゲームデータを消す気はない。だがしばらくはシムズを遊ぶ気にもなれない。