2020-08-01

プレイするのが辛くなったゲームデータ

シムズ4というゲームがある。

キャラクターを作り、社会で暮らす様を誘導ながら見守るゲームだ。

キャラクター容姿性格、家のデザインなど、様々なものを設定できるそのゲームにはまった私は、面白がって現実家族を模したキャラクターを作り、一つの家に住まわせて家族としてプレイしていた。

自分配偶者、そしてペットの二匹の猫。全員可能な限り現実容姿に似せたため、モデリングに数日もかかった。

現実ペットのうち一匹は、数年前にボロボロ状態保護をした子である

うちに迎えた時点ですでに内臓疾患をかかえており、加齢もあってかはきはきと動くことは少なかった。

それがゲーム内では家中を走り回る。颯爽と家具に昇り、もう一匹の猫と喧嘩をし、もりもりご飯を食べる。

現実ではありえない元気な様子に和みつつ、楽しくゲームを進めていた。

の子が先ごろ、亡くなった。病状が急激に悪化したのだ。

病院での投薬の頻度を上げ、家では毎日点滴。

ほんの数週間の間に段差を登れなくなり、排尿を失敗するようになり、ご飯咀嚼できなくなり、

リンジで流動食を与えるようになった頃には歩くことも出来なくなった。

辛かったろうに、亡くなる間際まで一緒に寝て、甘えてくれた。

最後まで頑張ってくれたあの子には感謝しかない。

夫婦で数日泣き暮らした後、久しぶりにシムズのデータを開いた。

覚悟をしていたが、涙が止まらなくなった。

の子が、ゲームの中では変わらず元気に生きている。

年をとらない設定にしていたため、老けることも、死ぬこともなく、ずっとそのままの姿で。

そしてゲームの中の私は、以前と同じようにあの子と戯れていた。現実の私がもう抱けないあの子を撫で回していた。

の子はまだこのデータの中では生きている、という思いもある。

だがゲームの中の私達を見て、感じたのは疎外感だ。

「あの子ゲームの中の家族のもので、現実のあの子はもうどこにも居ないのだ」という思いが強くなった。

辛くてそれ以上見ていられず、すぐにゲームは閉じた。

の子が生きている世界からゲームデータを消す気はない。だがしばらくはシムズを遊ぶ気にもなれない。

ゲームを再開する際には、新しいゲームデータを作り、現実とは似ても似つかないキャラプレイしようと思う。

つの日か懐かしみながら、あの子のいるゲームデータを起動できる日が来るのだろうか。

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