あるジャンルについての情報をまとめていただけのサイトだったが、
いわゆるまとめサイトではなく、個人の日記の延長のようなものだった。
情報まとめを主とする方向へ舵を切ってからは、意外と多くの人に見てもらえていたらしい。
どうやら私個人に対して恨みがあるわけではなく、ジャンルそのものに対するアンチらしかった。
併設していた簡素な掲示板が荒らされ、迷惑かつ不快ではあったが、それだけのことだった。
それから少し間をおいて、私が現実世界で激しいショックを受ける出来事が起きた。
詳細は控えるが、「恋人に振られた」とか「10年来の友人と絶交した」とか、そういう類の、
当時の私はひどく落ち込み、実際丸1日寝込んだ。
この件で人間不信になった私は、急に荒らしのことが怖くなった。
いや、正確には、怖くなったのは荒らしではなく、「荒らしではない人たち」の方だった。
今好意的に接してくれている彼ら彼女らが、今後も荒らしにならない保証があろうか、いやない。
引きこもりと化し暇を持て余していた私は、サイト閉鎖に対する反響をエゴサし始めた。
そもそも人の多いジャンルではないので、反応はあまり多くなかったが、「荒らしに屈した」との見方が大勢だった。
そしてその多くが、サイトを閉鎖に追い込んだ荒らしへの激しい呪詛を呟いていた。
まったく証拠の無いことで、これほどまでに強い言葉を他人に投げつけることができるのか。
人間は、やはり怖い。
それ以来エゴサはしていない。
数年間更新を続けたサイトと、その閲覧者との交流の場を失った私。
みんなが不幸になった。
この話はここでおしまい。