昨年からYouTubeに良質のミステリーが転がっているので、ぜひおススメしたい。
それは、桜を見る会の野党合同ヒアリング動画である。はじめこそ、野党のヌルい進行や追及に、軽いイラつきを覚えるかもしれないが、そこはどうにか慣れてほしい。
面白いのは、官僚の答弁である。ありとあらゆる日本語を駆使して、否認・言い訳・嘘ではないが事実でもないことを口にして、秘密や真実を隠し通そうとするその様は、まるでミステリー作家が、様々なトリックを以って読者を騙そうとしているのに似ている。
例えば、名簿の廃棄については当初、
1.2019年度から名簿の保存期間が1年未満の文書となり、会の終了後名簿を遅滞なく廃棄した
2.2018年度以前の名簿の保存期間は1年以上だが、1年以上経っているためそちらも廃棄済み
というような説明であった。私は、1の保存期間が変わったという点に強く疑念を抱きつつ、2については、まぁそういうこともあるかもしれないな、と思いながらヒアリングの視聴を進めた。
すると今年に入って、2について新たな事実が分かった。保存期間1年以上の文章は、廃棄時に記録を残す必要があるのだが、2013~2018年度に渡り、この廃棄記録がないことが分かった。
これは、素直に聞けば「2は事実だが手続きに問題があった」なのだが、同時に「2を事実にするため、手続きに不備(その記録がない)があるということにした」というストーリーが、読者の脳裏に推理として浮かび上がってくることになるのである。
野党ヒアリングは一事が万事この調子で、優秀な官僚のみなさんが、まるでミステリー小説の容疑者かのように、どうアリバイを取り繕い、言葉巧みに読者を欺こうとしているのか、非常にエキサイティングに楽しめる。
少し前にはてブでも話題になったが、事実と主観を区別できないしゃべり方を意図的にしてくる、優秀な官僚のみなさん。特に、酒田課長という、この物語でキーとなる登場人物が、私のお気に入りの登場人物である。
彼が登場する続編(桜を見る会以外の)があれば、ぜひ読んでみたい、と思う。