2019-09-08

[] #78-2「夏になればアイスが売れる」

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何もしないことにだって意味を見出せる、だなんて気取ってはみても退屈なものは退屈だ。

俺が家を出ると部屋は一気に静寂に包まれ、残された弟はソワソワしだした。

「何か、何かしたいなあ」

もちろん、この“何か”に宿題は含まれていない。

宿題はやるべきことではあっても、やりたいことではないからだ。

弟は今日やると決めたことは全力でやるが、やらないと決めたら全力でやらないのである

キトゥン~……いないのか」

飼っている猫と遊ぼうとするが、呼んでも気配がない。

どうやら、どこかに遊びに行っているようだ。

「あーあ、キトゥンですら何かしてるのになあ」

両親も外出しており、家にいるのは自分だけ。

俺だったら好都合な空間だが、弟は孤独のものに娯楽性を見出せない。

何かを謳歌するには、いつだって誰かが必要なようだ。


「……仲間に連絡してみるか」

では友達と遊ぼうと、いつも連れ立っているメンバーを誘ってみるが尽く全滅。

ちょっと言いたいんだけど、シャワーの勢いが強すぎるのよ」

「俺にじゃなくて、ホテルの人に言ってくれ」

タオナケは家族旅行

「と、とにかく今日は一人でいたいんだ」

「えー、でも外いるだろ? 音が漏れてる」

「と、とと、とにかく無理だから! とにかく!」

とにかくドッペルは掴み所のないことを言って、とにかく断ってきた。

ちょっと無理かな。これから明鏡止水に身をやつすんで」

「メイキョ……なんて?」

「あれ、『ゼブラセラピー』をご存じない? 自宅で簡単にできる……」

ミミセンは何か、よく分からないことをやってる。

「となると、後はシロクロしかいないけど……」

シロクロはラジオ体操スタンプ集めに忙しい。

各地を練り歩き、朝昼晩ずっとやっているガチ勢だと噂になっている。

既にお菓子の詰め合わせは手中にあり、次はお菓子の詰め合わせVer.2のために日夜体操しているらしい。

「……やばいな、俺だけ何もしてないじゃんか」

弟は焦っていた。

無理に捻り出して何かをする必要もないだろうに、みんな何かしらやっているという事実に囃し立てられた。

しかし、アイデアが出てこない。

今まで大抵のことは家族や仲間たちと共にやってきたから、一人前提で何かをやる発想力がなかったんだ。

「そうだ、タケモトさんだ……夏休みの先輩に知恵を授かろう」

から、こんな時ですら他人ありきなのである

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