そう思いふとビルの一角にある喫茶店に行くと、なんと取り壊されていた。
完全に取り壊された中に、また新しく木造の何かが作られていた。
リニューアルをするのか?いいや、それほど客は来ていない。
工事の作業員も休憩中だったようで、結局誰にも「ここの喫茶店、どうなったんですか?」とは聞けなかった。
検索して出て来た、いつのものかわからない電話番号は、かろうじてかかったものの、繋がらず。
この喫茶店のおばあちゃん、お姉さん(といっても40代だが)に泣きながら人生相談をしたことがある。
いつまでもいじめを思い出してしまうこと、いよいよ社会に出ることへの不安。
「人を見る目に自信がありません。騙されそうで怖い。」という一言に声を揃えて「「そんなことない!!」」と返してくれたお2人。
不安な時はいつもこの声を唱えていた。そのおかげで今、つらいこともあるけれど社会人として楽しく頑張れています。
厳しいことばかり、でも的確なアドバイスに何度も何度も救われてきた。
お2人とってはただの客だったと思う。けれどその言葉全部が私にとってはかけがえのないもので、今でも胸の中で光り続けている。
「化粧、上手くなりましたよ」褒められちゃうかも?バッチリ決めてきたメイクは、建物の木の香りに消えた。
本当にありがとうを伝えたい。伝えたいのに、名前すら知らない。生きているのに会えないって、こんなにももどかしいことなのか。
私は今、丁寧に整えられた前髪でこの文章を書いている。
今日、話すはずだった言葉たちが次々指先から溶けていくのを感じている。
軽い挨拶だけでもできないだろうか。ああしたい、こうしたい、が浮かんでは消えていく。
今日はまだ夜がある。夜が終わって明日、この気持ちはどこへいくのだろう。
純喫茶はいつ閉店してもおかしくない。人もいつ会えなくなってもおかしくない。
さみしい。