何らかのチラシをお願いします!と手渡す中高生を見て、見つからないように隅っこを逃げるように歩いている自分に気付いた。
そういえば昔やらされたことあったなあと思い出す。
その募金が、自分達の活動が世の中に良いものだと信じて疑わなかった。
だから、自分達に一瞥もくれず歩いていく大人を見て、軽蔑した。
あの時、一瞥もくれず通り過ぎていく大人を全員悪だと決めつけていた。
困ってる人を助けるために、1円でも10円でもこの箱に入れてくれれば良いのに。
困った時助け合うのが人間だと教わったのに。
この人たちは自分勝手で自己中で、人のことを考えられない残念な想像力の持ち主だ。
そう思って軽蔑した目で睨んだ。
君たちが目にしている大人達は全員が人を助けられる余裕があるわけじゃない。
毎日預金残高を見ては、次の給料日まで自分がいかに豊かに無理なく生きられるかを考える。
それは全部自分だ。
仕事に行くために洋服だって買わなくてはいけない。どこに行けば安く手に入る?
お金に困ったら誰が助けてくれる?
だが、困った時誰が助けてくれる?
今見ず知らずの人への募金をすすめている君たちは、助けてくれる?
長い目で見ればとか、自分の老後を支えてくれるのは君たち中高生かもしれない。
けど、ごめん。
私は今君たちを助けられない。
やっぱりどんなに言い訳をしても、私は想像力の乏しい可哀想な大人だ。
ごめん。
わかってるんだ。だからそんな目で見ないで。
他を当たって。
今日も、君たちの横を急いでいるふりをして通り過ぎる。
明日もきっと。自分の財布が逃げないように握りしめて、君たちから逃げる。
どうか、大人になった君たちがこんな思いをしないように。
こんなみじめで醜い大人にならないように。
それだけを祈ってる。