原因はタバコが元になった肺腺ガン。小腸に転移するという珍しい進行の仕方で、もう化学療法も効果がないらしい。病院の先生からは、残された時間をお父さんが出来るだけ楽に過ごせるようにしましょう、と言われた。
寡黙で、人に弱音を吐かず、黙ってやるべき事をこなす父だった。これといった趣味はなく、強いて言えば家でテレビを見ながらお酒を飲んでタバコを吸うのが好きだった。それが自分の命を奪う原因になると考えていたのか、今となってはもう訊いてもどうしようもない。
言い方が難しいが、自分の子供といえど子供扱いすることなく、1人の人間として見てくれた。私のやる事に口は出さない主義で、習い事も志望校も就職先も、「ここに決めた」と言えば必ず「そうか。」とだけ言い、黙ってその道に進ませてくれた。
私が人生に悩んで学校を辞めると言った時も、返ってきたのは「そうか。」の一言だった。てっきり死ぬほど叱られると思っていた私は拍子抜けしたが、その時改めて父親の器の大きさを思い知った。
ガンにかかった時も本当は辛かっただろうに「ちょっとしんどいけど大丈夫」「仕事が残ってるから」と入院を先延ばしにし、
結局手遅れになってしまった。(痛みに鈍い人なので、本当に分かっていなかったのかもしれないが)
「1週間ぐらい検査入院してくるわ」と言い、そのまま最期を迎える事になるなんて。
父が日に日に動けなくなるのが怖い。
父の意識がなくなるのが怖い。
父の死が近づくのが怖い。
まだ55歳なのに。
定年後お父さんずっと家にいるの?たまにはどこか出かけといてよ、なんて笑っていたのに。
いつか犬を連れて旅行に行こうって言ってたのに。
親不孝な娘でごめんなさい。
何もしてあげられなくてごめんなさい。
機嫌の悪い時、適当に返事をしてごめんなさい。
お父さんが自慢の娘だって言えるような事が何一つなくてごめんなさい。
俺も数年前に家族を肺がんで亡くしたよ。 強い麻酔使うと呼吸も止まるから使えないって、痛みで苦しそうだった。それでも手を握ってると少しは楽にしてくれているような気がした。 ...
ありがとうございます。良くも悪くも素直じゃない人なので、痛いとか苦しいとか正直に言ってくれないのが困る所なのですが、出来る限りのことはやりたいと思います。