2017-09-02

[] #35-1「非人道的な寛容」

弟の友達には、常に耳栓をつけている子がいる。

間内でのコードネームはミミセン。

実に安直なネーミングだ。

なぜ普段から耳栓をつけているのか俺が尋ねたとき、彼は「この世には雑音が多すぎる」と答えた。

そんな彼の苦手な雑音、第4位は他人電話

第3位は工事の音。

上位はどれも自分根本を断つことができないのがツラいらしい。

そして今回の話は、その2位と1位。

とあるつの雑音で苦悩する、ミミセンの奮闘劇だ。


ある日、俺はバイト先へ行くために電車に乗っていた。

その時に、ミミセンと鉢合わすことが多い。

ミミセンは弟たちと遊ばないときは、余暇図書館で過ごすことが多いらしい。

「おや、ミミセン。今日図書館か」

「うん…そ…だ…マ…ダ……ちゃん

恐らく「うん、そうだよマスダの兄ちゃん」と言ったのだろう。

耳栓をつけているにも関わらず、意外にも会話は円滑に行えている。

ちょっと声のボリューム調整が下手くそな時があるのが難点だが。

「たくさんの本がタダで読めて、しかも静かで快適な場所なのに、皆どうして図書館を利用しないんだろう」

「皆が利用すると、たくさんの本が読めなくなって、静かで快適な場所じゃなくなるからだろ」

「ああ、そっか。さすがマスダの兄ちゃん

キトーに答えただけなのだが、納得してしまったようだ。

ミミセンはしゃらくさい子だが、こういう所は妙に素直だ。

他人事ながらに心配になる。

「さすが年長者だね」

「俺はティーンエイジャーだ。年寄り扱いするような表現はやめろ」

「僕から見て相対的に、って意味だよ」

今日も何気ない雑談をしているだけのように思えた。

だが、今回はちょっと事情が違っていた。

「ふえ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん」

耳にしばらく残るような雑音が、不規則に流れてくる。

それが赤ん坊の声であることは音の発生場所を見るまでもなく明らかであった。

相変わらず、赤ん坊の泣き声は耳障りだ。

かといって、それが止めようと思って止められるものではないことを俺は知っている。

気にはなるが、気にするだけ無駄だ。

俺が気にしていたのは、どちらかというとミミセンの方だ。

俺ですら耳障りだと思う音なのだから、ミミセンにとっては地獄のようだろう。

そう思って目を向けると、意外にも落ち着いていた。

彼は耳に栓を突っ込んでいるにも関わらず、そこから更に耳当てをつけて防音体制を強化していたのだ。

なるほど、この程度の雑音は対策済みか。

俺の心配杞憂だったな。

と思っていたが、それから間もなくミミセンでも耐え難い状況に発展してしまう。

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