優しい死神の飼い方を読んだ。三章がピークだった。あと、戦時下の物語を描くのって難しいなあって思った。
この小説は連作短編集になっていて、ひとつひとつの章で小さな謎をおい、全体を通して大きな謎を解くっていうオーソドックスな構成になっている。
なっているんだけど、ちょっぴり前半と後半とで毛色が変わりすぎているきらいがあった。例えるなら塩の街みたいな感じ。小出しの三篇の後に大きな物語がくるって形になっていた気がする。
個人的に気に入らないのは、物語の配分が雑だったところ。もっと後半の大事件あっさり目にして小出しの内容を充実してほしかった。
あるいはもうちょっと前後半の分け方を不明瞭にした方がよかったと思う。ダイヤモンドの捜索や、迫りくる凶悪犯の情報をそれらを解明する章を作ることではなく、ほかの事件を追っている最中に判明するような形にしてあればもっと気に入ったと思う。
また第一章の戦時下の物語について陳腐だなあって思ってしまった。この時代を書くのは本当に難しい。知識と想像力が大切なんだなあって思わされてしまった。
四章で死神が自分の存在を告白してしまうのも残念だった。その方が書きやすいし、物語も動かしやすかったのだろうけれど、最後まで死神は人間と直接関わりあってほしくなかったなあ。
とはいえ三章最終部の美しさは素晴らしかった。本当にここがピーク。というか、ここから物語の毛色ががらりと変わってしまって、それが肌に合わなかった。
地下室いっぱいに色彩と太陽の光が広がっていく感じが切なさと相まって胸に迫る読書感だった。
すっごく読みやすいお仕事系キャラクター小説って感じだったんだけど、主人公が変わるごとに、つまりは章が進むごとに月日が大きく変化するところで少し、ほんの少しだけ読みづらさを覚えた。
どうせならそれぞれの章ごとにタイトルを決めちゃえばよかったのにって思ったんだけど、そうしなかったのには何かわけがあるのかもしれない。