2016-08-02

ロケット団は、ぼくたちだった。

リリースから数日後。深夜のオフィスでの出来事


フジロックから帰ってきた会社の先輩が、少し遅れてポケモンGOをはじめた。

既に課金しまくっていたぼくや同僚のアドバイスを「ほうほう」と聞きつつ、少しプレイして「えっ。これってストーリーないの?」と驚いていた。


小学校低学年の頃に赤緑が発売され、青、ピカチュウ、そして高学年になると金銀が出た。先輩は、そんなぼくの三つ上の年齢。子どもの頃に初期のポケモンを楽しんだ世代だ。

スマートフォンゲームをしたことがない」と話していたので、ポケモンというコンテンツに期待し、久々にゲームを触ったのだろうと思う。


しばらく、オフィス近くの複数のポケストップにモジュールを使い、ポケモンを捕まえ、アメをため、ポッポビードル進化させて経験値を積む…ということを繰り返す。

要領を得てきた先輩が、ポツリと呟いた。

「おれたちがやってること、なんかロケット団みたいだな…」

わず、同僚たちと顔を見合わせてしまった。


ポケモンを乱獲し、経験値のために進化させ、不要ポケモンはどんどんアメと交換する。

子どもの頃にぼくらをワクワクさせてくれた「ポケモン」とは、明らかに異質なものだ…。

ポケモンを捕まえる以上に、育てることが楽しかったし、一匹のポケモン進化させるかどうかはとても大事なことだった。

先輩の「ロケット団みたい」という言葉は「一匹一匹のポケモンに対して愛を持たない大人」になってしまった、今のぼくたちを巧く表現していた。


ゲーム世界現実と混ざり合い、バーチャルリアル相互作用しあうテクノロジーは、ぼくたちに新しい体験を与えてくれる。

一方で、街から街へと一瞬で移動したり、ポケモンに乗って海を渡ったり、“ゲーム世界からこそ”できた体験は、どこかに失われてしまったようだ。


「船に乗ったり、洞窟探検したり…もっと冒険たかったなあ…」

アプリを閉じた先輩は、少し残念そうな顔をしていた。

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