僕が5月5日を抜けると、そこには平日があった。
覆面の怪人が殺戮を繰り返すわけでもない、なんの変哲もない、平凡な金曜日だった。
とりあえず僕は、終わりかけたこどもの日の気配を感じながら、
余り物のリゾットをフライパンで軽く熱を通して、パルミジャーノチーズをおろして、パセリを添えた。
そして、2016年のゴールデンウィークが、僕にとってどういう意味を持っていたのか、考えた。
それは、とても長い休日だった。
長すぎた、と言ってもいい。
僕の中にあった会社員としての生活習慣は粉々に破壊されてしまっていた。
そのような長い休日に、人々は驚くほど色々なことをする。
電車に乗って、美術館に、テレビで特集された日本画家の展示会へ行く。
車を運転して、長い間会っていなかった両親の元へ帰り、自分の子供の成長した顔を見せる。
まるで長い戦争から帰ってきた兵士が、故郷に勲章を持って帰るように。
そういう意味において、僕はこのゴールデンウィークを驚くほど無為に過ごしていた。
元々友達と言える程の人間はいないし、月に一度会うガールフレンドとも連絡をとらなかった。
去年もその前の年も、もしかしたら僕が生まれたときから、同じ光景を同じ日にちに放送しているのかもしれない。
残った缶ビールを流しに捨てて、大きく息を吐いた。
とにかく僕は、前に進まなくてはならない。
そこにどんな未来があったとしても。