言いたいことは題名の通り。
「自分は○○な人間だから、もし不愉快なことがあっても『ああそういう人間なんだ』と思って許してね」
例えば、後輩にこんな奴がいる。
そいつは人を傷つけたり、不愉快にさせてしまう言動を繰り返しとってしまう。もちろん本人には悪気はない。
しかし、かわいそうなことに本人には『人の気持ちを抉ってしまった』という自覚がある。
だから彼は飲み会の後や、会議の後、そして喫煙所の雑談の後ですら深い後悔にさいなまされることになる。
そんな後輩が初対面の、特に自分より弱い立場の人に必ず言う言葉がある。
「俺は口が悪くてびっくりすることもあるかもしれないけれど、ホントそうしたくてやってるわけじゃないから。
もしそういう時がきたら、『俺さんってそういう人間なんだ』って流してね」
おそらくこれは本人にとって精一杯の自衛。
『人を傷つけてしまう』という一面を、他人に許してもらいたいという気持ちの顕れなのだろう。
自分はその欠点を許しきれなくて、繰り返すたびに自分を責めて、責めて辛いんだ。
人を傷つけてしまう自分の良くないところ、自分はよく分かってるから。反省だってたくさんしてきたから。
……それを君も分かってよ。 分かってくれるよね? だから、許してね☆怒らないでね☆
といった具合に。
そんな風に心を守ろうとする行動は分からないでもないが、ひとつ言っておきたい。
不愉快な思いをさせられた人の負の感情はどこに行くのか考えたことはあるのか。
可哀想な『傷つけられた人』は、最初に魔法の言葉で釘を刺されているから、後輩みたいな人間を攻めることが難しくなっているのだ。
「あっ……そうか、この人って『そういう』人間なんだけ……」
もやもやは残り続ける。
傷つけた方の人間は、他人から攻め立てられることもなく、今まで通り自責の念にかられてベッドの中で反省会を行うだけ。
毎回、毎回その身にならない反省会は行われる。そして相手方の気持ちを知ることはないから欠点は永遠に改善されることはない。
魔法の言葉は『当事者意識』を奪う魔法を、唱えた本人にかけるのではないか。
卑怯。
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「俺って怒ると、つい手が出ちゃうんだよ。
でもお前のこと嫌いなんじゃなくて……ほんと、自分でも止められないんだ。
俺はお前のことほんとに好きなんだよ。だからさ、俺のこと怒らせないでよ。ね?」
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