ネットがまだ一般的でなかったとき、そこは現実社会では発露出来ない思いを持つマイノリティたちが隠れる場所だった。
いわゆる「アングラサイト」と言われるものが多数存在し、彼らはそこでマジョリティたちから隠れて過ごしていた。
現実社会に持ち出したら間違いなくバッシングを浴びることを分かっていた彼らは、世間から隠れる場所としてネットを選んだのだ。
「ここなら彼らはやってこない」
「万が一見つかっても寄ってこないように入り口に注意文を書こう」
「いや、偶然入ってくることを防ぐために入り口を隠そう」
「パスワード制にして入れないようにしよう」
彼らは自身の居場所を守るため、マジョリティたちに見つからないよう様々な予防措置を行った。
ここまですればマジョリティたちも入ってこないだろう。
その後、ネットの普及により多くのマジョリティたちがネットにやってきた。
彼らはさながらアメリカ大陸の開拓団のように新天地であるネットを開拓しだした。
彼らの開拓の手はマイノリティたちが隠れ住んでいたアングラサイトにも及んだ。
「汚物は消毒だ~!」
さながら某世紀末のモヒカンのように、彼らは一般常識という火炎放射器を掲げてマイノリティたちの居場所を暴いていった。
また、マジョリティたちに混じって、ネットという隠れ場所を知らなかったマイノリティたちもやってきた。
彼らはまだ暴かれる前のアングラサイトを見て「ここなら『これ』を出してもいいんだ!」と感動した。
先住民マイノリティたちにとっての不幸は、移民マイノリティたちの一部に「隠す」という行為の意味を理解しない人、勘違いする人がいたことだった。
やがて世紀末モヒカンに見つかり、次々と火炎放射器で焼かれていった。
彼らは焼かれながら呪詛を吐く。
「あそこでもやっているじゃないか、何でこっちだけ責められるんだ」
そうやって隠れていた先住民たちや受け入れられた移民たちも世紀末モヒカンに見つかり、火炎放射器で焼かれた。
「次は俺たちの番じゃないのか」
「いや、まだここは見つかっていない」
「ここも見つかったら、我々はどこに行けばいいんだ...」
住処を追われた先住民たちは居場所を転々とし、世紀末モヒカンに見つかる恐怖と戦いながら自身の居場所を作ろうとした。
しかし、開拓が進み、世紀末モヒカンたちが開拓した場所には後から来た何も知らないマジョリティたちが現実社会さながらの社会を作っており、彼らの安住の地はどんどん消えていく。
隠れ住むのも限界に近かった。
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