2015-12-30

父親の笑い声

血の繋がらない父親がいる。

私が出会った頃には30歳程だった父親の姿は、私が成人する頃には(若しくはその数年前から)、私にとって身体の大きな中高生の様に映るようになった。

他人感情を慮ることが出来ない。あらゆる欲求の我慢が出来ない。

何を話掛けてもまともな返事は返って来ない。

会話が3往復以上続く事はまず無い。

口が回らない為に、感情がどうにもならなくなると声を荒げて凄んで見せることもある。

ニュース番組や、ワイドショーの深刻な題材を取り上げた番組を観ているとチャンネルを変えたがってそわそわする。

一方単純なお笑い番組を観始めると、普段の寡黙さからうって変わってけたたましい笑い声を上げ続ける。

これらは父の、そう、ほんの一部分であり、たった数時間同じ空間にいるだけでこれだけの事柄が目に付くということなのだ。

血の半分繋がった弟はLD(学習障害)のグレーゾーンの診断を受けている。

分かっている。恐らく父も何らかの発達障害を抱えている。

自身の育った家庭環境を想えば、何のケアもなく大人になってしまった彼を不幸だとも言う事が出来るだろう。

大きな生き辛さを抱えて、これまで生きてきたのだ。無駄プライドが高いのだって当たり前なのかもしれない。

ただ、私の母親が父に対してまるで彼の親がするように接する事を強いられている現状が、

弟が、話の通じない父を時に軽蔑し、時に恐れて暮らしていることが、随分辛く思える。

本人に非は無いのかもしれない。何度も話し合いの機会を設けてきたけれど、終局的には話して分かる問題ではないのかもしれない。

家族悪人はいない。誰が悪い訳ではないのに、こんなにも歯車が回らない。

うちの家族は「悲惨な何か」がある訳では決してない。

ただ全員が何かに疲弊して家族歯車が歪んでいるだけだ。別に珍しくも無い、探せばどこでもある問題なんだろう。

しかし、やりきれない思いばかりが積み重なっていく。

この記事で何かを訴えたい訳ではないし、これは本当にただの愚痴だ。

今さっき放送していたバラエティー番組で大笑いする父の笑い声が、あまりに耳から離れなくて、

湧き出た負の感情をどこかに置いてこないと、理由もなく叫び出しそうになった為に書き殴った文章である

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