女友達と2人で飲んでいた。
普通の居酒屋で、雰囲気的にデートに使えなくもないだろうけどあいにくテーブル席だ。
平日だったし立地の割にはそんなに客は入っていない。
いつものように、なんとなくとりとめのない話をしていた。
お互い職場が近く、お互いグルメなのもあっていい店を見つけては教え合ったりしていた。
デートなんてもんじゃない。大衆酒場だってラーメン屋だって行くし、2人でバーのカウンターで飲んでもカラオケに行っても何事もなく出てくる。
仕事のことからお互いの恋人のことまで何でも話せる。そんな気楽さが好きだった。
今回は向こうが見つけた串焼きの店だ。いつものように、腹も膨れいい感じに酔っ払って店を出て駅に向かった。
駅について改札をくぐった頃に、ぐっと手を握られる。
手を繋いだままホームに着き、今度は胸に顔を埋められる。
今までこんなことはなかったけど、その時は「あーこいつ酔っ払ってんなー。」くらいにしか思っていなかった。
「何をいきなりw んー、4人。」
「嘘だろ。俺が知ってるだけで2人は彼氏いたろw」
「知ってると思うけど私ピュアだからさーw 最初の一人は半年付き合っても一度もしなかったし。」
「さいですか。」
「3週間前。」
「彼女は?w え、別れたの?w」
「そう。私は半年前。」
「でしょうねw」
そのまま手を引かれる。そのまま2人で電車に乗る。
「俺逆方向なんだけど。」
「いいじゃん別にw」
その後はあんまり覚えてない。手を引かれるままそいつの家にいた。
当然の話、振り切って帰ろうと思えばいつでもできた。しなかったけど。
そいつがシャワーを浴びてる間に彼女に「おやすみ」とだけLINEを送った。
独特の背徳感と高揚感がこみ上げてきたのはよく覚えている。
翌朝、駅まで2人で歩いた。おれがよく知っているいつものそいつだった。
酒の勢いってこわいねなんて笑い合って、駅で別れた。
あれって、本当に何だったんだろうな。