甘えんなとか世の中ナメてるとか、言われるんだろう。
だけど、私より不幸な人を見たことがない。
いつも体の中に泥がつまっているみたいな感じがする。
利口で計算高く生まれついた私は、子供の頃から要領よく大人をナメ腐って利用して生きてきた。
汚らしい愚かで浅はかな奴ら。
だってゴーギャンの絵に描かれた深いメッセージもハイネの詩も読めないなんて。
きっと脳に神経の代わりに納豆菌がつまってる。
東京の美大に通うために上京してからは、いいようなものになりかけてきたけどね。
でもやっぱり大人はダメね。
つまらなくて形にはまってて、眩い物なんて何も生み出せそうにない。
でもでも、じゃあ私はどんな芸術ができるのって言えば、何もできないの。
絵を描いても詩を書いても、何もない。
心が動かない。
偉大な芸術家の作品からは感じれるのに、その美しい何かが私の中を通ってキャンバスに吐出されると泥水みたいになって。
これじゃ私もつまらない大人になっていく。
だけど、そうじゃない人もいて、彼女が作るものは美しくて儚くて、きっと深いところで宇宙と一体化してる。
時間の流れを生み出す何かなんだ。
でも私にはできなくて。
それに気がついて、私は学校を休学した。
休学して何をしていたかといえば、体を売っていた。
これもきっと芸術の一種。
楽しくて仕方がなかったよ。
もう男のことは何でも知ってる。
男は女の裸を見てるつもりになってるかもしれないけど。
全部さらけ出しちゃってるのは男のほう。
2年間休みなく売り続けて、抜け目のない私は一財産築き上げた。
そして利口な私は、始めた時期もよかったんだけど、株でそれを倍にした。
配当だけで一生食うに困らないよ。
私は自由だ。
現世に蘇った高等遊民とは私の事。
なんて大嘘。
満たされない。
つまらない絵、誰も感動なんてしない。
空間に広がっていく粒子が見えない。
あってもなくても同じ。
居ても居なくても同じ。
気がついたらまた体を売っていた。
でも今度は私がお金を払って売っていた。
抜け目のない計算高い私は、汚くて臭くて愚かな中年に一晩だけ夢を見させてあげる。
奥さんとはもう何年もしてないのね。
私がここに居るって感じられるのは、この時だけ。
昨日彼女の絵を見に行った。
殺してやりたいと思った。
自分が幸せになるために何が必要なのかわからないバカな女の子なんだね。
とりあえず文書の才能がないのはよくわかった
自分に自惚れてたんだね。 美術的センスも、若さゆえの身体も。 セックスで男の方が全部さらけ出してるんさじゃなくて、あなたが自分を隠そうと必死だったり、わかって貰えなかった...