睡眠導入剤のマイスリーを飲みはじめて、かれこれ三年ほどになる。
最初のうちは、飲んで二、三〇分もするとすとんと眠りに落ちたのだが、
だんだん体が慣れてきたのか、飲んでもすぐに眠れなくなった。
頭がぼんやりしてくるのだけど、朦朧とした気分のまま、入眠への一線を超えず、
ふわふわした寸止めのもどかしさが夜更けまでつづく。
で、スマホやパソコンをいじりだし、余計眠れなくなる悪循環へ陥る。
この手の薬は飲めば飲むほど効きが悪くなる気がして、なかなか追加分を口にする気分になれない。
睡眠導入剤に慣れると、薬なしでは寝つけなくなるし、がんばって寝ついても
眠りが浅く、夜中にふっと目がさめる。一度目がさめると、もう夜明けまで眠れない。
それで結局根負けして、追加分の頓服を奥歯で噛み砕いて流しこむ。
噛み砕いたマイスリーは苦い。
苦いからといって良薬かどうかは知らんけど。
あと、これは薬とは直接関係ないのかもしれないけど、
潜在的な不安が形となってあらわれるのか、親しい人の死や、後ろめたい過去の暴露などに出くわし、
汗びっしょりで目覚めることもしばしばだ。
最近では「自慰をしている現場に死んだ祖母が踏みこんできてこんこんとすすり泣く」
という夢がいちばんつらかった。
母や妹なら分かるけど、故人にオナニーを見られ「ほんに気の毒ねえ」と同情されるのは、
なかなかどうして堪えるものだ。
長年のニート生活が、私の精神に想像以上に暗い影を落としているのかもしれない。
ふだんは平然としていても、内心、忸怩たる思いが鬱積しているのかもしれない。
メンヘラでろくな職歴がなく、生まれつき異性から相手にされないときては、
どんな楽天的な人間でも、内面にどろどろした黒いものを抱えざるをえないだろう。
悪夢はそういう人間精神の底に溜まったヘドロめいた澱を的確に掬いあげ、
余談だが、目覚めたあと、なにをオカズにしていたのか思い出そうとしたが、
祖母の崩れた泣き顔のショックが強く、まるで思い出せなかった。
もしかすると「大正生まれのAVギャル」のようなニッチな老婆モノで抜いていたんだろうか。
だとすれば祖母が泣いたのもつじつまがあうのだが……
なんだかなまぐさい話で恐縮だが、睡眠導入剤を長期服用していると、こんな弊害がある。
睡眠導入剤飲み始めて6年半経つわ。 はじめはマイスリーだったけど、1、2年前に中毒性があるからって別のに変えられた。 俺の場合は睡眠導入剤飲むとなんか気持ち良くなってくる。 ...