一人はできる君、ひとりは残念君と言いました。
そのプロジェクトは優秀なPMとモチベーションの高いメンバーで構成されており、スケジュールやタスクなど大変見通しがよく、整理された進行状態を保っていました。極楽プロジェクトと呼びましょう。
できる君はプロジェクトの全体を把握し、自発的に自分にできそうなタスクを探し、プロジェクトに貢献しはじめました。すぐに重要なタスクを任されるようになりました。
残念君はプロジェクトを見通せておらず、自分に何ができるかも分かりませんでしたが、PJメンバーが彼にちょうど良いタスクを探したり作ったりして、彼に仕事を振っていました。残念君も頑張ってはいますが、重要な仕事はまだできませんし、PJのリソースを奪っている面も否定できません。
ある日残念君に転機が訪れます。ダメなPMが仕切り、モチベーションの低いメンバーが集められた極悪プロジェクトに初期メンバーとしてアサインされてしまったのです。誰も何もやらない極悪プロジェクトでは、一番下っ端の残念君にあらゆる仕事が集まってきました。プロジェクト概要の資料作成からはじまり、社内外の関係者への連絡、ミーティングの召集、スケジュールの調整、タスクの整理と分担、そしてほとんどのタスクのワークまで。
誰もが残念君に仕事を押し付けました。まだ会社や仕事について分かっていない残念君はその状況に疑問を感じながらも、やむなく仕事に手を付けて行きます。社内外の関係者から罵詈雑言を浴び、1歩進んで5歩下がるような状態でプロジェクトをドライブしはじめます。やがてぼろぼろのゾンビのような体ではあるもののプロジェクトはまわり始めました。残念君の心身を削りながら。
さて、できる君です。極楽プロジェクトのPMは、優秀なワーカーとしての地位を築いたできる君に、仕事を形作るところから身に着けて欲しいと考え、あるサイドプロジェクトを任せることにしました。「失敗してもどうにでもリカバーできるPJなので、好きに進めてみなよ。」そういわれましたが、どうしても不安なのか、できる君はPMにこまごまと相談します。「この打ち合わせに**さんは呼んだほうがいいですか?」「このタスクは**さんで大丈夫でしょうか。」「この資料、これで良いでしょうか。」
極楽PMはその状況について「相変わらず見えてるタスクは適切に処理するし、作業も早い。ただ、仕事を形作って行くことについて腰が引けてるというか。。このPJはリスク無いので好きにして良いっていつも言ってるんだけど。相談することは悪いことではないので、文句言う筋合いでもないんだけど。。」
その後の残念君は、あらゆる意味でひどい有様でしたがどうにか極悪PJをまわしており、「あいつ、わりと何でもできるようになっててワロタ。」「**の手配が間に合わない?こないだ残念が似たような状況で強引に押し込んでたよ。聞いてみたら?」「A社のaさんに頼みたい?忙しい人だからなあ。でも、残念がaさんに毎日怒られてるうちに仲良くなってたから相談してみたら?」などの評価を得ていました。
できる君はというと、サイドプロジェクトを無難にこなした後はあまり目だったトピックも無く、相変わらず極楽プロジェクトでタスクをこなしつつ、たまには小さなプロジェクトを担当したりしていました。彼の評価は「限定された範囲で、上の判断を仰ぎながらなら、まあ無難にこなすよ。」といったものでした。
二人がその後どうなったかというと、二人とも会社を辞めました。
できる君 「ここでは、自分はこれ以上成長できないと思ったんです。」
残念君 「体も心も持ちません。これ以上もう無理です。」
なるほど!できる君は極悪プロジェクトに突っ込もう!