ゲームも、まんがも、アニメも、ラノベも、テレビ番組も、ラジオ番組も、Webサイトも、サービスも大人が、仕事として、お金をもらって、やっている。
子供のころ、そんなことを考えもしなかった。漠然と「仕事」というものを知ってはいたけど、それは会社勤め、サラリーマンと同義だった。まさか自分が遊んでいるあれやこれやを大人が作っているなんて考えもしなかった。それを仕事にしたい、なんて思いつきもしなかった。ただその後、そういう仕事は東京じゃないと成立しないとわかったけど。
どうしていま、こんなにつまらない仕事をずーっとしているんだろう。その間にも、おもしろいものを作ってる人たちがいる。僕と同じく、仕事として。お金をもらって。つまり、おもしろいことをやって暮らしている人がいる。それに引き換え僕の仕事はどうだ。人に見せられる仕事か。誇れる仕事か。楽しんでもらえる仕事か。言いたくなる仕事か。社会に必要な仕事か。必要は必要か。そうじゃなきゃ仕事として成立しないか。いや、ヤクザはどうだ。社会からの要請か? 要請か。
今日も仕事だった。本来なら休みなのに。明日も仕事だ。明後日も。つまらない仕事が僕を待っている。待たなくていいのに。おもしろくもない仕事が。職場の誰一人たのしそうに働いていない。顔を見ればわかる。みんなつまらなさそうだ。僕も仕事中に笑わなくなって久しい。つまらないからだ。まったくたのしくないからだ。
仕事があるだけいい、そう考える人が集まっているんだろう。集まったというより、残っているんだろう。金以外に得るものは何もない職場で、僕は、時間をつぶし続けるんだ。その代り、誰かが面白いものを作って、それを見せてくれる。誰かが面白いことをするのと引き換えに、僕はつまらないことをしなければならない。そして面白いものに触れている一瞬だけ、束の間だけ、たのしさを思い出す。笑う。薬を投与されたかのように、思い出したかのように、笑うんだ。そして、薬が切れると、またつまらない生活に戻る。薬がなければできやしないつまらないことをする。その間もおもしろいことをする人がいる。
僕と彼とはどうしてこんなに別れてしまったんだろう。僕の仕事なんて誰でもいいじゃないか。どうして僕がしなければならないんだろう。何がいけなかったのか。関東に生まれなかったからか。勉強しなかったからか。そういう仕事があるって思いもしなかったからか。
毎日、毎日、薬がほしくてつまらないことを繰り返す。そうしないと薬を買うお金がないからだ。でも、本当は、薬なんていらないように生きたいんだ。でももうどうしようもない。僕は薬を飲んで生きなきゃならない。つまらない、底辺の、誰でもできる、面白くない、くだらない、生きる価値のない、仕事をして死ななければならない。薬を作ってくれる人のために。その人がつまらないことをしなくて済むように。もっといい薬を作ってくれると信じて、僕は体をかまどにくべなければならない。
でもつまらない毎日がその薬を取る時間も奪っていくんだ。つまらないことで埋め尽くされていくんだ。その分、誰かがつまらないことをしなくていい、と信じないと生きていけないんだ。一瞬だけ楽しいんだ。圧倒的に生きていてつまらないんだ。なにより仕事が面白くないんだ。向いてないんだ。僕にはできない仕事なんだ。でも表面上は僕が選んだことになっているんだ。こんなの選んだはずがないのに。誰かに押し付けられているんだけなのに。でも、お金のためには黙るしかないんだ。薬を買うお金が必要だから、僕は黙ることにしたんだ。黙ることを選んだんだ。昔の僕はそれでもよかったと思っていたんだ。
でももう薬も効かなくなってきたんだ。