2012-10-19

「地味すぎて気づかれにくい日本語の変化」にケチをつける

地味すぎて気づかれにくい日本語の変化 - アスペ日記

http://d.hatena.ne.jp/takeda25/20121017/1350465781

1.について

  1. 金融界を揺るがせている
  2. 将来に思いを巡らせる
  3. 五感を研ぎ澄ませて楽しむ
  4. 名刺を切らせてしまった

これらの表現違和感があるでしょうか。

まったくないという人もいるかもしれません。

しかし、「揺るがせる」「巡らせる」等は、辞書を見てもないことが多いのです。

辞書には、「揺るがす」「巡らす」として載っています

「揺るがす」のほうは、「す」という使役形を含んでいます

これは、元々は下二段活用(否定は「せず」)だったのが、下二段活用がなくなるとともに、五段の「す」(否定は「さない」)と下一段の「せる」(否定は「せない」)に分かれた片割れです。

(用例番号は引用者付記)

1.は「ガ行五段活用の動詞「揺るぐ」の未然形である「揺るが」に、使役の助動詞「せる」が付いた『揺らがせる』の進行形。」

2.は「ラ行五段活用の動詞「巡る」の未然形である「巡ら」に、使役の助動詞「せる」が付いた形。」

以下略

であって、「揺るがす」「巡らす」とは別の単語変化ではなくて、分化と呼ぶべき。他も同様。特に1.のような報道関係によく見られる文章になると、客観性の保持からか、使役を伴う表現が増える。(主体性の問題)

変わってるんじゃなくて、使い分けてるのであって、置き換わってるわけでもない。

ちなみに、上記用例はすべてヲ格を伴う他動詞であり、自動詞他動詞一対一対応するわけではなく、自動詞ひとつに複数の他動詞存在するのはたくさんあるわけで、結局のところ、これを微細であれ変化と認めるのは難しい。

2.について

スマッシュで打とうとしてミスって空振

優秀な社員を飼い殺してはもったいない

秋なのに桜が狂い咲いている

これらはいずれも名詞の中でも「転成名詞」と呼ばれるものであり、転成名詞はすべてが他の品詞から派生して名詞になったものである

ゆえに、これらは「名詞動詞になった」ではなくて「転成名詞がもとの品詞のものとして扱われている」と解釈すべきであり、そしてそれは転成名詞の成立上他の名詞より柔軟に使えるからサ変名詞より馴染みやすく、楽に受け入れられることが容易に想像できる。そしてこれを変化とみるかというのは、やはり難しい。

3.について

複合動詞を作る時に、もともと意味として自然なのは自動詞+自動詞」「他動詞+他動詞」という作り方です。「たちなおる/たてなおす」・「おちいる/おとしいれる」のようなものがありますしかし、このようにしていったん固まった形から自動詞他動詞化や他動詞自動詞化が起こることがあります

自動詞には自動詞他動詞には他動詞を結びつけることが意味として自然であるわけではない。

http://nihongo.do-bunkyodai.ac.jp/qandaDisp.php?id=104

たまたま「立て上げる/立ち上がる」の対立が琴線に触れただけで、探せばたくさんあるのだから、そういう分類自体が意味を成していなかったと見るべき。


なんというか、現代曲を古典和声で説明つけようとして破綻するのと同じ有様を見ているようで、感慨深い。

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