採用前に企業が就活生の「裏アカ」調査、たった数十分で特定も 過激投稿の“無法地帯”を見て人格把握
学生側の受け止めは複雑だ。都内の私立大3年の女子学生はインスタグラムを利用している。裏アカには、愚痴や他者の中傷を投稿している友人もいると言う。だから「企業が学生の本音を調べたいという気持ちも分かる」と一定の理解を示しつつも「間違った調査で、自分のものとは違うアカウントを基に判断されないか不安はある」。
一方で、こうした調査には危うさもある。他人に知られたくない本音を投稿したアカウントを調べることで、学生の出自や思想信条を把握する可能性があるためだ。利用の仕方によっては、就職差別につながりかねない。
職業安定法は採用活動で人種、思想信条などの個人情報の収集を原則、認めておらず、収集する場合は同意が条件だ。厚生労働省も配慮すべき事項として身元調査を挙げ「就職差別につながる恐れがある」と指摘している。厚労省担当者はSNS調査について「一概には言えない」と前置きしつつ、思想信条などの個人情報を収集する恐れが高い点を挙げ「好ましくない」との見解を示している。
一方、企業調査センターは「企業側が採用プロセスで学生に同意を取っているので、法的に問題はない」との立場だ。
こうした点を識者はどう見るのか。岩手大の河合塁准教授(労働法)は、調査自体は違法とは言いがたいとしつつ「本来集めることが禁じられているデリケートな情報まで手に入れてしまうことがあり、本人が知らないところで把握するのは問題になる可能性がある」と指摘する。
さらに「企業側もSNS情報で不採用にしたとは言わず、調査したこと自体開示する必要はないので、企業側がどういう理由で不採用にしたかが学生には分からず、ブラックボックスになっている」と分析する。調査される可能性があることを把握していない学生もいると言及した上で「どういう目的でどう調査するかを企業側は、あらかじめ示すことが必要だ」と話した。