春コミで買った同人誌のいくつかがハズレだった。
10冊買って10冊全部が最高だなんてことはありえないと思っている。
言っちゃ悪いがプロでもなんでもない素人の創作物だ。そういうこともある。というか、そういう事の方が多い。
それを500円、1000円、あるいはもっとの金額を出して買うことを選んだのは自分自身であることもわかっている。
それでも500円あったら安いランチが食べられるし、1000円あったらいろいろできる。
金を払っているんだから私を楽しませろ、とは言わない。同人誌は個人の嗜好の発表会である。
描き手が妄想をかたちにしたものを、買い専の私は金を払って見せてもらっている立場なのだ。
しかし一方で、せっかく金を払ってるのだからその分は楽しみたいと思っている。
今回ハズレだった本は
・表紙こそ好みの絵柄であったが本文はそうでもなかった
・どういう話なのかよくわからなかった
といった具合である。
これをどうやって金額分の元を取るかといえば「よかった探し」をする。
・本文はそうでもなかった=表紙は好みだった
・オチが気に入らない=その直前まではよかった
このように考えるけれど、ネチネチした性格の私は「とかなんとか言ってもハズレはハズレ」という思考は残っている。
その思考をねじ伏せるくらい「ここがよかった」というポイントを羅列していく。
しかし言うほどぽんぽんと出てくるわけがない。出てくるくらい良い本ならそもそもハズレとは言わない。
それでもひねり出すためにどうするかというと、感想を書くのである。
最近は本の奥付に感想用フォームのQRコードを載せているサークルがある。
当然だが「お前の新刊買ったけど表紙に比べて本文が下手!表紙詐欺!」などという内容ではない。
「会場で思わず手に取ってしまうほど素敵な表紙でした!」と書く(この感想がいい感想かどうかは別だ)。
とにかく気に食わない点以外は全部褒める。
絵が好み。線が綺麗。話が上手い。描写が丁寧。タイトル付けが巧み。カラーの色使いが素敵。
ネタがなければ装丁を褒める。PPがかわいい、特殊紙がキャラにぴったり、本文色インクが話の雰囲気にマッチしている、とか。
とにかくほめる。ほめちぎる。目についた要素を全部ほめる。
もちろん自分に嘘はつきたくないので、絵が気に食わないのに「好みの絵柄です!」とは書かない。
感想を書くために目を皿にして長所を探し、実際に文字に起こし、誤字や失礼な言い回しがないかチェックする。
そうすると自分の中で「あれ、この本ハズレじゃなくね?アタリじゃね?」と思えてくる。
時間をかけて感想を書き、送信ボタンを押す頃には、ハズレの本はハズレでなくなっている、ことがある。
最近はTwitterアカウントも奥付に載っているので、鍵付でなければ感想を送ったあとでアカウントを覗きに行く。
すると「感想をもらえた!嬉しい!」とツイートしていることがある。
それを見て「私のようなネチネチした人間が送ったとも知らないで…」とニヤニヤしている。
お前、すっげえいい奴だな
ものすごい善人じゃねえか。 なんだこいつすげえ。