2015-05-05

ピンサロへ行けと看護師は言った。

ピンサロへ行け」と僕は看護師に言われた。

僕が人生で初めて告白した女性だった。

優しくて、賢くって。とても綺麗で。

「優しく接するのも患者ケアする仕事の一つ。私に幻想を抱かれても困る。」

汚物をみるような目で、心底哀れむような目で、僕はそういわれた。

ぼきん、と僕の中で何かが折れる音がした。

そうか。幻想は求めてはいけないんだ。愛情なんて求めてはいけないんだ。

僕は少ない入院生活の残りを全て勉強に費やし、退院後はコンサルファームに入った。

そして、得た金のほとんどを風俗に費やした。

そうか。やっぱり看護師のいった通りだった。とても簡単なことだったんだ。

それからお金を使うのが惜しくなった僕は、

会社で叩き込まれ問題解決思考、仮説思考をもとに適当に女を探した。

なるべく効率を上げるためには、弱い女が良かった。

から愛されなかったキャバ嬢や、夫から愛されていない人妻や、愛とかとくに考えていない頭が弱い女子大生

みんな、簡単に僕と寝て、僕を愛した。

僕は出会いからセックスまでのPDCAサイクルを高速で回した。

僕は人間の弱い部分を知っていた。

自分がとても弱い人間だったから、どこをどう揺さぶれば心が揺れるのか熟知していた。

少し揺さぶり、よろけてこけそうになったところを、そっと優しく支えてあげればそれでよかった。

僕があのときや、あのときに、そうして貰いたかったことを再現すれば良いだけだった。

どんどん弱い人間効率的に寝て、学習した。そのうち、大抵の女は落とせるようになった。

他人の万能感をへしおるのはとても楽しかった。

ちょうど所得も増えていた僕は強い人間になれた気がした。

行かないでください。嫌いにならないでください。私を愛してください。

僕は首を横にふって立ち去った。

最初はとても自分がひどい人間に思えて何度も何度も吐いた。

けれど、じきになれた。だってさ。僕に幻想を抱かれても困るだろう?

強い人間には運もよってくる。仕事も順調にいきとある上場企業社外取締役になった。

僕はますます強い人間になった。

あるとき、街で僕は看護師に再会した。

僕にピンサロをすすめた女だ。

もうすぐ結婚をすると看護師は僕に話した。

聞けば相手は公務員年収たかだか僕の六分の一。

色々話をしていたが、結局のところ、たくさんの男と付き合い、女を磨き、理想の男を手に入れたと言う成功譚だった。

そうか。と、僕は思った。理想の男なのか。

僕は自分の女の中から、できるだけ美しいキャバ嬢を選び、看護師婚約者を誘惑させた。

キャバ嬢最初は嫌がったが、僕に捨てられたくないがため、しぶしぶ看護師婚約者を誘惑した。

婚約者はすぐにキャバ嬢と寝た。僕はそのとき写真を撮らせて、それを看護師FBタイムラインに流した。

看護師婚約者関係は壊れた。

なんだ。看護師試行錯誤努力で手に入った関係は、そんなものだったのか。

それから、僕は看護師をとても優しく受け止めてあげた。

看護師は僕を愛し、僕と寝た。

そのとき僕には大局観があった。

試しにちょっとお金に困ってるんだといってみた。

看護師はすぐにお金をくれた。

貯金が増えてよかったと僕は思った。

徐々に要求額を増やしていって80万を超えたとき看護師お金をくれなくなった。

看護師とのセックスにも飽きてきたので、僕は看護師さようならをすることにした。

行かないで下さい、嫌いにならないで下さい、愛して下さい、セックスして下さい、借金があるんです。

どうか、どうか。

看護師はそう言った。借金をして僕にお金をもってきていた。

うーん、そうなのか。

僕は言った。

あのね、僕に幻想愛情を抱かれても困るんだよね。

お金がない?簡単なことだよね。

ピンサロへ行け」

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