あの原作を2時間にまとめられるのかと思っていたが、見終わると原作がむしろ冗長だったように思える。
「とんかつとDJって同じだったんだ!」の一発ネタから紆余曲折を経て名作になるまでの過程で積み上げたものを最初から全部つなげてリバイバルしてる。
つうかね原作だとちょっとだけ伝わりにくかったことが凄い伝わるんだよね。
まあ半分は単なるめぐり合わせなんだけど、もう半分の「本物を知っている」ってことが凄い伝わるんだよ。
とんかつDJのテーマって究極的には「とんかつもDJも、本気で客をアゲるためにやることは同じなんだ!」なんだよ。
「とんかつとDJって何が同じなのか?」がギャグだったのが、いつの間にかガチになってる所が面白いんだわ。
地元の仲間や縁に支えられながら恵まれた環境と自分のやりたいことがマッチしたとき、本物が産まれるその物語なんだよね。
DJってのは他人の褌で相撲をとってる部分がかなり多いんだけど、それは言い方を変えれば「素晴らしいものの素晴らしさを次の世代に伝えていく」ってこと。
オイリーはそれをアゲ太郎に伝えたくて「本当に好きな曲を知ってもらいたい」と伝えるけど、アゲ太郎はそれを最初形しか真似しないわけよ。
でもアゲ太郎はとんかつ屋として一皮剥けたときに「受け継がれた素晴らしいものを伝える。自分の虚栄のためじゃなくて、客のために、先人の努力に報いるために。それがひいては自分のためなんだ」って気持ちになるわけ。
オイリーがアゲ太郎に見た「本物をすぐそばで感じ続けてきた。受け継ぐべきものを伝えていく立場にいる」というDJとして滅茶苦茶恵まれた素質が覚醒するわけ。
客をアゲるためにやるべきことはいつも変わらない、だからとんかつDJが本物のとんかつDJになったら、それは本当に本物のDJになる。
その物語が見事に一本につながってくるんだ。
アゲ太郎がとんかつ屋として、DJとして成長する姿をじっくりと描く原作は面白い。
でもアゲ太郎がとんかつDJとして一皮剥けた、いや、一皮カラっとアガったその瞬間のアガりっぷりを完璧に描ききったこの映画も最高なんだ。
単に話題作に乗っかっただけのチャチな邦画だと思って見てない人は見てくれ。
原作ファンだからこそ、とんかつDJがこんな形で料理されるのが許せなかった人こそ、見てくれ。
これは生揚げでもカチカチでもねえ。
最高のアガり具合だ。
いいレビューだな