自分は子供が欲しいのに、一向に子作りに協力をしてくれないので、理由を聞いた際の事だった。
「交際中は別れたくなかったから嫌々ながらセックスをした、結婚したらもうセックスはしたくない」
そのカミングアウトはショックだった。
それから三年程の結婚生活は寝室は別々で、一度もセックスは無かった。アセクシャルだから、という事だった。
世の中では、私達のような夫婦を「偽装結婚」や「友情結婚」と言うらしい、私は偽装をするつもりも友情のままでいるつもりも無く、彼の子供が欲しくて、家族になりたくて結婚をしたのだけれど、彼はそうでは無かったのだ。
何度も離婚を考えたし、発狂しそうな孤独の中、一人で泣いた夜も何度もあった、それでも別れなかったのは彼を好きだったからだ。
今思えばなんとも愚か過ぎるけれど、恋とは愚かなものだから仕方ない、愛されなくても、母親の様に女中のように生活を支える生き方でも、体で繋がる事が出来なくても心で繋がっていればと思っていた。
相手は人妻だった。何が起こっているのか、私には飲み込め無かった。
心がつながっていれば?心も繋がっていないじゃないか。
あれ?私は何のためにここにいるんだっけ?
“妻”ってなんだっけ?
なんで、こいつ私と結婚したの?
今、私は恋や愛という気持ちを持てなくなっている。
もっと言うと性欲もない。
ある一定まで感情が昂ると、まるでブレーカーが落ちるように気持ちが萎えてしまう。
まあ、もう三十路を過ぎた婆が恋だ愛だとのぼせてしまうのもきっと気持ちが悪いものだからこのままでも良いのかもしれないけれど。
もしかしたら私も「アセクシャル」になったのかもしれない。だとしたら彼と今の私なら「アセクシャル」同士でお似合いなのかもしれない。
恋の歌が、恋愛映画が、月9が共感できずに私の横を通りすぎていく。
ポリコレがらみでアセクシャルという言葉が広まってるけど あれを自称してる人間の9割はアセクシャルじゃなくて単に好みがうるさいだけの人だと思う