今年度非常勤教員として1コマもった某大学から来年度も同じ授業を担当してほしいという依頼があったので引き受けた。
その授業は前期開講のもので今年度は当然のようにオンライン授業だったのだが、来年度は教室授業とオンライン授業を選べると言われた。ただし、教室で授業をした場合は授業に出席できない学生のためにオンラインコンテンツによるフォローアップを行なう義務が発生するのだという。そんな条件付きで本務校とはぜんぜん違うところにある大学に行って1コマだけ授業をする物好きはいないわけで、当然のようにオンライン授業を選択した。
では来年度のオンライン授業をどういうふうにやるのがいいだろうか。当然今年度の授業の動画ファイルはすべて残っている。動画ファイルは毎回3本あって、1本は学生からのコメント・質問について答えたり、説明したりしている30分程度のもの。残り2本は講義本編前半と後半で、それぞれ30分程度。ものすごく手抜きをするとしたら、2020年度の講義本編をそのまま21年度授業として提示し、課題としてコメント・質問の提出を求める。それでコメント・質問への応答動画だけ新しく準備して公開するというものである。こうすると、たぶん労力的には3分の1くらいで同じ給料(1ヶ月約3万円、最終的な手取りは約2万円)がもらえる。
はっきりいえば、楽ができるという話なのだが、それは許されるものだろうか。授業内容は1980年頃から始まったある研究分野について、約40年の研究の流れを話していくものである。古い話をするときでも今の学生にもわかるように説明するために時事ネタに頻繁に言及している。21年度の学生も知ってはいるだろうが1年前のネタなので、例示されてもすぐにピンとこないこともあるだろう。それ以上に、「授業の再放送」をメインコンテンツにして手を抜くというのは倫理的にどうなのだろうか。とはいえ、3分の2くらいのところまでは授業内容に本質的な変更もないのに新しく動画を作り直すのも非常にバカらしいような気がする。
もちろん、すでにある講義動画はそのまま使って、時間がなくて話せなかったことを説明する動画を30分ぶんくらい新しく作ってそれを公開するという手もある。でもそうすると授業コンテンツとしては1回あたり120分くらいになるので、「授業負担が大きい」と学生から不満が出るかもしれない。さてどうしたものかな。