奴とは昔はそんな事しない関係だったのに、今は僕の自転車を池に投げている。奴の仲間うちのノリ。
まあ、あの空気を吸ったらそうなるのもわかる。
ただ、奴の友達。自分とは面識のないあいつからは純粋な「お前は俺より下の人間だ」という何かを感じる。
あいつが居なければ、奴とは友達のままで悪ふざけされていたのかもしれない。
成績がそこそこ良かった僕は、私立のわりと進学校へ進んだ。中学校の友達は誰もいない世界へ。
そっちではそんな人間関係の問題は起きなかったけど、中学生の頃にあった「そこそこ成績が良い」という周りからのリスペクトは失った。
さらに、受験勉強としての学問に疑問を抱いていた思春期の僕にとって、進学校という空気に微妙な居心地の悪さを感じていた。
結局しっくりとした居場所を見つけたのは大学生になってからだった。
あいつと小学校の時同じクラスだった女子が話す所によると、小学校の時ちょっと色々あって女の先生が泣き出してしまう事があったらしい。
その時、あいつがその女の先生に励ます言葉をかけたそうだ。それも結構男らしい言葉を。
「中学校であいつ不良になったでしょ。でもこの事覚えてるから悪い人に思えなかったんだよね」
歴史があると見え方が違ってくる。
同じ事されても、小学校の頃遊んだ事のある奴と、無いあいつとでは、こっちの受け止め方が違ってくる。
そんなちょっと思い出した昔話。