主人公はカメラマンの夢を挫折して家電量販店で販売員をしているアラサーの男性。
カメラ売り場担当として、そして写真撮影を趣味として夢と折り合いをつけようとしている。同僚とも良好な関係を保っているつもり。
そんな彼は自分とそっくりな人間と出会い彼と交流を重ねていったことでアイデンティティがどんどん揺らいでいく。そして更に自分のドッペルゲンガーが次々と出現し、次第に彼らと主人公の自我が溶け合わさり事態はどんどんカオスになっていく…
とまあこういう筋書きなんだけど、
大なり小なりみんな考えることは似通っていて本当は個性なんてものはない。そんなの個体差でしかない。
それでもあらゆるものががちがちにシステム化されゆく現代社会において一個人としての尊重を守ろうとするならば、椅子取りゲームみたいに誰かを足蹴にしなければならない。
今作は皆が見ないようにしているその鬱憤と暴力性をシュールかつシニカルに描いた作品で、増田みたいな人にとって少しは慰めになるかもしれない。