「では今は?」と問われたら、趣味と言えるものが無くなってしまった。
ニュースは通勤前のテレビと通勤時間のウェブニュース、気になる名前や情報は検索で解決。
気になる本はKindleで積み本するものの読むのは半分以下。時間が足りないのではなく、明らかに食指が動かなくなった。
暇さえあれば本屋に入り浸り、少ない小遣いで新しい作家に出会うべく古本屋に足を運び、新書は図書館で予約して読むほどに活字中毒だったのに、活字への欲求は今やインターネットの横書き文字で満たされてしまう。
読後の余韻に浸り、あとがきを読んでさらに余韻を深め、本を閉じると共に脳内に感想のインデックスを作っていたはずなのに。
傷ついた男性女性を集団でリンチする文字列や、脳内に留めておくべき駄文を斜め読みするだけで活字欲を消耗してしまい、後には一生何にも活かされないであろう他者への呪詛や正論の鎧を纏った批判の伝え方ばかり。
「いかがでしたか?」と感想を求められるたびに、自分の中に何かの感想を探そうとするが無。驚く程に無。何も感じてない。ただ時間と活字欲を消費したという事実だけ。