2019-11-05

虐待冤罪について小児科から

小児科医です。話題になっている虐待冤罪について、というより、冤罪の詳細については立ち入りません。

自分虐待専門の小児科医ではありませんが、一般小児科医としての視点から医学的な面についてのみ書きます

小児の静脈血栓症10万人中0.64人と「極めてまれ」な疾患。

一方で虐待では、年回50人以上は命を落としている「きわめてありふれた、死に至る病」。そして虐待死の半分以上は0歳児。

更に小児の場合静脈血栓症発症する子は、何らかの基礎疾患や投薬を受けていることが多い。

たとえば悪性腫瘍がある子ども血液凝固能が亢進しているため、血栓ができやすい。あるいは血液凝固因子の先天的な異常により、血液が凝固しやす子どももいる。

逆に言うと、「何も基礎疾患がない子が脳出血で死亡した場合、強く虐待を疑う」というのが、ある意味小児科医として当たり前のスタンスである

そしてどうしても人間自分知識バイアスをかけて物事をみてしまう。

こういった虐待死が疑われる症例で出てくる小児科医は、いやになるほどの虐待関連の症例をみてきている。

虐待専門ではない自分ですら、表面的には人当りのいい両親が、どれだけ恐ろしいことを子どもにしているのか、絶望することだってある。

虐待医学的な研究が難しいのは、唯一の観察者である保護者加害者であるという事実である

まり受傷機転についての信頼性が著しく低いのだ。


司法システム問題はきっとあるのだろうし、それは司法の人に任せる。

私は小児科医として、あらためて思考停止せず、他科にも敬意をもってコンサルトしなければならないことを痛感した。





子ども虐待医学-診断と連携対応のために 編著:ロバート・M・リース

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn/49/6/49_396/_pdf/-char/en

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