「男が我慢する理由」を説明したい.ただ,「男が我慢すべき理由」ではなく,あくまで「我慢する男は,何を考えているか,感じているか」を説明したい.
まず,「男が飲んでいようがいまいが,女が飲めないことに変わりはない」という考えがある.これは合理的でもっともだ.我慢する男もそれは理解している(と思う).
考えるべきは人の心理の非合理な部分だ.つまり,「男が飲むのを止めようが,女が飲めないことには変わりはない.ただ,そうは言っても,目の前で飲まれるのは辛い」と言う部分だ.この心理は,相手に伝えたところで,(女が飲めないと言う)根本の問題は解決されない.だから非合理だし,表現しても意味がない.表現したら,集団の利益を損ねるだけの,わがままな女になるだけだ.
ここで,女が絶対にこの非合理な心理を持っていると言うわけではない.女が100%合理的な考えをする場合もある.しかし,問題は,女が非合理な感情を持っていたとしても,(それが非合理であるが故に)それを男に向けて表現することは,一般に,憚られるということだ.つまり,男から見れば,女が自分の気持ちを言葉で表現しようと(「気にしないよ,男は飲んでいいよ」と言っていたとしても),それが本心であるとは限らないのだ.
その上で,男が取るべき行動を考える.男が,(それが合理的だと言って)女に構わず酒を飲んだら,女はどう思うだろうか.「私は合理的に振る舞うことのみが要求され,非合理でわがままな感情があるかどうかは,男は気にしていない」と思うだろう.ここで重要なのは,女が実際に,「男に酒を飲んで欲しくない」と思っているかどうかは問題でないということだ.女が腹を立てるのは,「非合理な心理が満たされない」からではなく,「女が非合理な心理を持っているかどうかもわからない状況で,一方的な態度を取られ,自分の本心は気に留められていない」という状況に腹を立てるのだ.
つまり,「酒を我慢する」と言う男は,女の人の理屈では通らない,非合理な心理を想像し,その可能性を気遣って行動している.女は,そのような気遣いの態度があるかないかを,無意識的に感じ取っている.