最初はシーン描写から。中学生になる頃にはシーンを繋げる事が出来るようになり、物語のはじめからおわりまでを表現できるようになった。
高校に入り、物語を夢想しながらも状況的に書けない日々を過ごし、大学には行かず就職した。
そうして仕事をしながら長編を書いたり、短編を書いたりしながら漠然とした不安の中で経験を積む内に、出版社から作品が発売できる事になった。
その頃には歳を重ねてすっかり中年になっていたのだけど、とにかく本は出た。
そうして思うのだ。
これは儲からない。
朝から本業の仕事をして遅く家に戻り、風呂に入ってキーボードを叩く。
眠りにつくのは早くて一時、遅ければ三時。
そんな日々を過ごしながら小説の印税収入は一冊50~100万程。
書籍化に伴う執筆以外の各種作業は精神をガリガリと削り、むしろ本を出すのが苦痛にすらなりつつある。
年間に10冊出すのは無理ではないのか。
なりたかったのはなんだ?
小説家だ。
小説家とはなんだ? 小説を書く人か、小説を書いて生活費用を賄う人か。
前者なら小学生の頃から小説家だし、後者なら本を出版した今でも小説家ではない。
デビュー作で私を打ちのめしたあの先生も、あの先生も、しばらくは小説で食えていなかったのか。
いや、昔なら食えたのだろうか。
憧れの聖地に辿り着いたらそこが砂漠と廃墟しかなくて、それでも小説家になりたい欲求はいくらも薄まらない。
一体どうすれば救われるのだろうか。
小説だけを書いて生きていきたい。