昔、コンビニでアルバイトをしていた。駅の寂れた側にある、全然客の来ない店だった(なのに、半期ごとに目標達成の報奨金をもらっていたので、多分私が働いていた土日の昼というのは暇な時間だったのだろう)。5時間くらい働いて、その間に十人も客が来れば「今日はわりと盛況だったな」と思うような店だった。
大分前からコンビニのサービスが増えるたびに「店員が可哀想だ」という反応を目にするのだけど、その度に私は不思議に思ってしまう。暇なバイトって、時間が経つのが遅くて嫌じゃないだろうか?
私は嫌だった。レジを打ちに行っているのか掃除に行っているのかが分からないようなコンビニで働いていると、本当に時間の経過が遅いのだ。あまりにもやることが無さ過ぎて、ペットボトルが一本売れるだけで補充していたくらいだ(やることができて嬉しかった)。たまに、お客さんが手に取っただけで補充してしまい、「買うのをやめようと思ったら棚に戻せなかった」と渡されたことがある(非常に申し訳なかった)。手間の掛かる宅配便を頼まれると心底嬉しかったし、自動販売機の補充の仕事(あとシフト終わりの精算)は取り合いになった(真っ当な店だったので、そんなに暇な時間でもちゃんとバイトは二人いた)。掃除しかやることがないが、それだって五時間もあればやり尽くす(そもそも前のシフトの人だって客が来ないから掃除してるのだし、日曜日は前日にやり尽くしてる)。あと、あまり汚れてないところを掃除してもあんまり楽しくない。達成感がないのだ。自分で掘った穴を埋め戻しているような気分になる。そして、時計を見てもさっきからほとんど時間が進んでいないという絶望。
ただ、働いていた店のそばには大きな公園があったので、花見のシーズンだけは天国だった。一年に一度のハッピーウィークだった。店外まで伸びる長蛇の列。レジ前に積まれる弁当と飲料。ひたすら無心でレジ打ちするだけで終わるバイト時間(体感30分)。ガンガン売れて、ガンガン補充できる喜び。ずっとこうなら、バイトっていうのはなんて楽なものだろう!、と心の底から思った。はっきり言って、暇な時よりも10倍は楽だったし、体感時間で言うならそれ以上の差があった。
なので私は、店員がレジから離れられないような、あまり客の途切れないコンビニを見ると、いいなあ、と思ってしまうのだ。いいなあ、楽そうなバイトだなあ。レジ打ってるだけでシフトが終わるとか、天国みたいな店じゃないだろうか。