2017-09-16

まゆみは男性から着古したワイシャツを貰えたらハンカチをつくることにしている。

いくら着古していたって男性女性ワイシャツをあげる機会というのは多くない。なにせ捨てる寸前の衣服だ。でも、その機会は自分勇気を持って言い出すことでわりに簡単に得られるものだ。気づいたのは21才の頃だ。まゆみは21才から24才までの3年間デリバリーヘルスで働いていて、デリバリーヘルスっていうのはお客さんの約半数が出張でこの地に来ているヒトだから、奥さんやお母さんか、あるいはそのヒト自身で用意された『あした着る用のワイシャツ』を持ってくる。出張経験の多いヒトほど(あるいは旅行慣れしているヒトほど)、『きょう着ていたワイシャツ』を捨てて帰るというマイルールを持っていることが多い。単純に荷物を減らすためだ。

まゆみはそれを、もらうのだ。すてるんならちょーだい、と言うだけだ。最初勇気が要ったが、口から出た瞬間からその言葉は「捨てるんなら頂戴」以上でも以下でもない均一の意味となり、まゆみは新しい発見をしたのだった。ストレート物言い正義であり何よりも清潔であると、まゆみは着古したワイシャツから学んだ。

まゆみは左利きで、裁縫左手でする。まゆみは貧乏からミシンなんか家にないし、簡単ハンカチ一枚といってもすべて縫い終わるのは結構時間を要する。要したわりに、まゆみはハンカチ日常生活でそれほど使わない。お手洗いに行っても近頃はどこにでも風圧で皮膚の表面の水滴をふっ飛ばす謎の機器があるし、謎の機器が無い場合でもまゆみは鏡をみながら自分の髪の毛を撫で付けて手の水分を髪の毛へ移動させる。鏡すらないトイレでは、けっこうスカートの腰のあたりで拭いたりするし、そもそも手を洗わないことも結構ある。この発見は、ハンカチづくりの習慣が生まれからすべて学んだ。まゆみはそれで自分のことをすこし知った。


らびずぁてでぃべあ・っあーーーーーーーーーーー!!!

子どもたちが眠るのはだいたい夜の9時だと言っていた。彼がそれに間に合う時間に帰るのはまゆみの知るかぎりとても珍しいことで、たぶん一ヶ月に一回あるかないか位じゃないかなあと思う。まゆみは『ソチオリンピック日本代表応援商品 アサヒクリスタルゴールド』と書いてある缶をみつめながら、彼の子どもたちが眠っているあたたかい布団の繊維ひとつひとつを思い描いた。ハンカチにしたいなあと思った。

20140218

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※途中でシャウトしているのは、特撮ヌイグルマーZだと思われる。

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