一昨日の夜、衝動的に「手のひらに乗るマッチョが欲しい」と思って
これを注文した
届いた。
開封した。
触ってみた。
まさしく手のひらにマッチョが乗っている。
俺の手のひらにマッチョがいる。
筋骨隆々という言葉があてはまる体躯は、しかししっとりと吸い付くように柔らかい。
良い筋肉は柔らかいって言うもんな、と思った。自然にそんな風に思うくらいには、生々しい。
大胸筋、腹斜筋、手のひらと足だけはパーツの問題だろう、硬いプラスチックなのが妙な違和感だ。あと、重たい。骨組みがステンレスなのだから当然なのだが、ずっしりと重量がある。
背骨はどうなっているんだろう、柔らかく反り、うねる動きも、確かにそこに肉があり、骨があり、内部で筋肉が撓んでいるように見えた。
写真ではわからなかった部分もこうして手に取ると、当たり前だがッ見えてくる。
二の腕や、首筋を走る血管。その隆起を再現する皮膚の張り。なんてことない蛍光灯に照らされているだけで、その刻み込まれた陰影が彫刻のような美しさを演出していた。
俺の、手の中に、マッチョがいる。
おもえば、マッチョに率直な憧れを抱いていたのはいつまでだっただろうか。
テレビの中に写るマッチョは力強く、俺はSASUKEが好きな子供だった。
いつか僕もあんなふうに強くなって、幾多の困難を乗り越え、いや乗り越えられなくても、あんな風に太い二の腕をシャツからにょっきり生やしてみたい。
けれど、マッチョへの道は険しかった。肉の付きづらい体質の俺が「いやマッチョとか見掛け倒しっしょ」とヒョロヒョロの男がマッチョをパンチ一つで倒す厨二漫画にのめり込んでいったのは、仕方のないことだったと思いたい。
いや、そんな俺のつまらない自分語りはどうだっていい。今、俺の手のなかにはマッチョが居る。俺の、俺だけのマッチョだ。
俺が好きなように、好きにしていいマッチョだ。
固く握りしめているマッチョの手のひらをそっと解く(開いた手のバージョンもオプションでついていた)
長い指、大きな手、浮いた骨と、血管。マッチョは指先まで力強く、男らしい。そんなマッチョが今や俺の思うがままだ。
そっとマッチョの股間を見やる。もうマッチョの息子はとっくに臨戦態勢になっていた(これもオプションで着いてきた。ちなみに通常、半勃ち、臨戦と三段階ある)
俺はそんなマッチョを見下ろして笑ったんだと思う。マッチョと言えど、好きに体を触られればこんなもんか。どんなに筋肉という鎧で己を守っていたって、ちょっとすればこんなに浅ましい。
そんなになっても頑なに背筋を伸ばして立ち続けるマッチョに手を伸ばし、そっとその背を丸めさせる。力ない胸筋は柔らかく、そこを柔らかく揉むとマッチョは少し震えているように見えた。
膨らんだ下腹を抑える。ここも柔らかい。爪を立てたら傷つけてしまいそうだ。今度からはマッチョのために爪を整えなきゃな、と思いながら足へ手を伸ばす。
マッチョの表情は読めない(ヘッドはついてこない)もしかしたら俺に何か思うところがあるのかもしれないが、マッチョに主張する方法は一つもない(ヘッドはついてこないから)
固く閉じられていたマッチョの膝を割り開く。ほんの少し、他の関節よりも硬かったような気がしたけれど、マッチョの抵抗はそんなものだ。俺がほんのすこし力を籠めれば滑らかな手ごたえと共にマッチョは股を開いた。
今これを注文した
いくらもらった? 手のひらに乗るくらい?