知り合いに二重国籍だった子がいる。日本とアメリカの。日本の法律のためどちらか一方の国籍を選択しなきゃならなくなった頃、その子はどちらを選ぶか相当悩んでいた。
当時その子はハーバード並に超ハイスペックなアメリカの大学に在学していたのだが、高校までは日本で「日本人」として過ごしていて自分の事を日本人だと強く考えていたので、その子は日本の国籍を捨てたくなかった。
相談された俺はその子の将来の事を考えて、絶対にアメリカ国籍を選ぶように言っていたのだが、自分のアイデンティティーに関わる問題でもあるので、その子は悩みに悩んだ末に日本国籍を捨てた。見ていて可哀想だった。
そしてその子は卒業後、色々訳あって日本企業の現地法人に腰掛けで入社した。
入社から半年後、その子の親友が重病にかかり危篤状態になった。親友の事が心配なうえにその家族にもお世話になっていたので、飛行機で行く距離にいる友と家族を週末に見舞うことにした。そのために金曜日に会社を休もうと思い日本人の上司に有給を申請した。すると上司は嫌味と共に却下した。「でも親友が危篤なんです」と食い下がると、今度は怒鳴り声と共に却下した。結局その子はそれ以上食い下がるのはマズいと判断して見舞いをあきらめた。
この話をその子のアメリカ人の父親から聞いた。そして「この話をどう思うか?」と聞かれた。
俺は「その子はいい経験をしたな。日本に戻りたいとか日本企業で働きたいっていう思いをこれでスッパリ捨てられるかもね」と答えた。
俺の会社は朝メールすれば休めるぞ アメリカの会社は大変だな
日本でもアメリカでも 両方のいいとこどりしてる会社がいいよね。
こんなたった数行の創作実話でもさらりと読み流せないような矛盾を平気でぶっ込んでしまう奴がいるんだから なるほど小説と言うのは誰にでも書けるものではないのだなと実感する