2016-06-24

子供の頃、合法普段使いできる範囲なら鞭が最強なのでは!という謎のひらめきを得て、鞭を作ってペチンペチンいわせていた時期があった。

鞭といってもロープの先に重りをつけた程度のものだが。

水を入れたペットボトルや空き缶を的に、庭でひたすらペチペチと練習をした。ちょっと練習すると割と狙ったところに当てられるようになった。

鞭はなかなか強くて、切り返しが上手くいくと缶がへこむぐらいの威力簡単に出る。

腕相撲で2学年下の女子に「えっ?増田くん本気?」とか言われながら負ける俺にとって、スチール缶をボコボコにできる高揚感はなかなかのものがあった。

だが、何かのマンガで学んだハズだ。『強い力を手にしたとしても、その力に溺れてはいけない。』

この力は弱きものを守るために振るうのだ。国語ノートに墨汁と筆で増田流鞭術の心構えを記した。乾く前に閉じたら染みまくって半分くらい残ってたノートダメになった。

室内での練習中に失敗して窓ガラスを1枚割り、電球を1つ粉砕したが、俺は止まらなかった。

やはり鞭こそ最強なのだ。何より鞭術が日々上達している実感があった。

より精度を高めるために、さらに先のステップへ進もうと、様々な的を用意した。ろうそくの火だけを消す修行にも取り組んだ。

10回やって6回成功するぐらいにはなって、週に一度挑める昇級・昇段試験も順調に突破し、増田流鞭術の腕前は四段に達した。

より強い鞭を手に入れるため、細いロープを編み合わせて鞭を自作したりもした。元のやつの方が明らかに強かった。

家の軒先に作られたハチの巣の撤去も鞭で挑んだ。割と楽勝だった。素早く走るムカデもしなる鞭先からは逃れられなかった。

ある日の食事中、食卓のそばの壁にゴキブリが現れた。

俺は腰の鞭ホルダーから素早く鞭を取り出し、彼奴を目掛け振るった。

パンッ!という小気味よい破裂音を伴った会心の一撃は見事ゴキブリを爆発四散させ、夕食は台無しになった。

親にさんざん怒られ、何が入っているかからない味噌汁を完食させられた俺は、鞭を振るうのをやめた。

翌日、泣きながら一晩考えた俺は、先端が針になっているダイソーダーツを30本買ってきた。増田流投矢術の幕開けであった。

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