2015-08-23

40億円の仕様ミス

俺は平成2年にこの業界に入ってきた。今から15年位前で23歳のときだった。当時は某県に住んでいた。

初めて与えられた仕事人材派遣会社システムメンテナンスで、東京出張だった。出張期間は2ヶ月間。

この仕事にはN君という俺と同じく若手の技術者出張に出された。N君は俺よりひとつ上の24歳で、RX7を乗り回す派手目の性格のやつだった。

で、その人材派遣会社システムなのだが、複数システム会社が開発に携わっていて、請求システム仕様ミスがあり大混乱していた。

データの修復に人海戦術で挑んでいたが、それだけで1ヶ月くらい掛かかった。渋谷ビルの一室で缶詰状態で作業した。すべての伝票をチェックしてミスをみつけ、表計算ソフトに打ち込むのが俺の仕事だった。N君もこの作業をやった。

伝票の合計金額は80億円だったが、データをすべて修正すると40億円だった。つまり合計で40億円の金額が違っていた。これはシャレにならない。

当然、システム会社同士で大喧嘩になってた。殺し合いになってもおかしくない状態だったなぁ。「殺してやる」「裁判だ!」なんてね、怒号が飛び交っていた。客先の人材派遣会社部長さんはシラケきってて、「昨日、開発費の1億円を振り込みましたので」と淡々とした口調で言ってるのを聞いた。

そのときに思ったのが、「システムの開発費って1億円も掛かるんだ」と、その金額に驚いたのと同時に、「1億円かけて40億円の計算ミスをするシステムを作ってりゃ世話ないな」とか、思った。

けっきょく2ヶ月くらいの出張だった。その2ヶ月で、太った。そして、花粉症になった。俺にとっては仕事よりもそちらのほうがなによりも辛かった。

出張から帰ってきてから、もう一人一緒に帰ってくるはずだったN君が行方不明になった。そういえば、一緒に仕事をしてるとき悩んでる様子だったなぁ。N君が行方不明になったということで俺もいろいろ聞かれたが、このときはあまり気にしてなかった。

それからしばらくしてN君はなぜか北海道死体となって発見された。

車の中で練炭を炊いたらしい。当時、練炭自殺とかあまりいたことがなかったので、事故とも自殺ともよくわからんかった。

でも自殺なんだろうな。悩んでいたもんなぁ、、、でも、死ぬほど悩んでるとは思わなかったなぁ。当時は単に寒いから練炭を炊いて寝てしまったという事故ということで表向き片付けられたような記憶がある。実際のところ、なぜ死んだのかはいまだに謎だけどね。

俺が業界に入ってきて初めてやった仕事がこういう顛末だった。

思えばこんなできごとなんて大したことじゃなかったんだと、後になるとそう思うくらいいろいろなできごとがあった。これはほんの序の口しかなかったのだ。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん