2015-03-04

イノベーション、なるほどね

あるところに、乱獲による資源枯渇を防ぐため、漁獲量規制が行われている海域がありました。

地元漁師達は長年その決まりを守っていましたが、あまり必要もなかったので町の人には漁獲量制限のことは説明していませんでした。

ただ、「この海域勝手に魚をとるべからず」という看板のみが港に掲げられていました。

あるとき、この海域をよその町の若者が船で近くを通りかかりました。

若者は、この海域豊富水産資源を見て驚き、早速資源をとり始めました。

いくらでもたくさんとれたことを、若者不思議に思うことはありませんでした。

しろ若者自分がすごい大発見をしたのだと思いこみ、この海域イノベーションと名づけました。

若者は、「イノベーション万歳!!イノベーション万歳!!」と叫びながら、水産資源をとりつづけ、とても儲けました。

若者は、町でイノベーションのことを得意になって自慢しました。

「あそこは僕が見つけたんです。誰もやってないことをやる。これが僕のビジネスモデル。」

若者の周りには、事情をよく知らない賛同者が集まっていました。

そこへ、町の老人がやってきて、港の看板のことを尋ねました。

「あそこの海域漁獲量制限が行われているんでしょう?許可は取ったんですか?」

若者は、顔を真っ赤にして反論しました。

「アホか。新しいことをやると、すぐそうやって足を引っ張る人が出る。典型的な弱い者いじめ。僕はそんなのには負けないから。とにかく実行あるのみ。」

周りの賛同者も若者同調し、老人を非難し始めました。

老人は、めんどくさくなって、すごすごと退散していきました。

ほどなく、若者の船が無断で操業していることが、地元漁師に見つかってしまいました。

若者地元の港に連れて行かれ、看板の前で、漁師から、なぜ我々は漁獲量制限を行なっているか、懇切丁寧な説明を受けました。

しかしながら、若者には、そんな規制意味がないように思えました。

だって若者がいくらとっても資源は無くならないし、海は広いし、そんな資源無限にあるに決まっています

しろ、なぜみんな自分と同じように、好きなだけとらないのか、さっぱり分かりません。

若者は、漁師たちが妬みで嫌がらせをしているようにしか見えませんでしたので、

「出、出たーw、既得権益奴wwww」と叫びながら逆ギレして港を飛び出し、

その後も漁師達の注意を無視して操業を続けました。

しばらくすると、町の人の間でも、若者の儲けっぷりが有名になりました。

もともと資源枯渇という話は、漁師達の長年の経験による可能性の話でした。

そんな神話ような可能性の話を町の人は信用しなくなり、ついに、町の発展のために漁獲量制限撤廃されました。

制限撤廃されたことで、新しく漁師になる者が増え、仁義なき水産資源獲得競争が始まりました。

そうして何年かが経ちました。

水産資源は枯渇してしまいました。

港は寂れ、だんだん町も衰退していきました。

町に残った元漁師の一人は、ぼそっと、こう言いました。

「昔は良かったなあ・・・

そうですね。

  • しばらくすると、町の人の間でも、若者の儲けっぷりが有名になりました。 漁師はこのバカな若者に続く、第二、第三のバカが現れることを恐れ、地元ヤクザに若者の殺害を依頼しまし...

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん