2014-05-01

支えあう事

身体の不調を訴えて来院する人に、問診でいろいろ聞いてから診察と検査をはじめる。

半分ぐらい終わってから

「ここまでは大丈夫なのだけれど、他に何かない?」

と声をかける。大抵はうーん、と一度首をかしげるので、

「頭のてっぺんから足の先まですべての異常を内科医には伝えるもんです。水虫だろうが虫歯だろうが全部です。全身を診るのが僕らの科です」というとやっと、

(これは本当で、虫歯動脈瘤の原因になったりするのだから本当にすべてを伝えるのは大事なこと。だからほんとうは診察の時は本人もしらない発疹があったりするから個室で裸になるべきなんだけれど時間がなくて全員にはできません。何度も通っている人はそのうちちゃんと診ています

「1か月前からワイ○ックスをもらっていて…」というような話をはじめる。

「昨日からトレ○ミンに変わりました」

という経過でなんとなく精神科先生が考えていることがわかる。薬歴重要

それはそれとして、何を言いたいかと言うとせっかく医者に来たんだから利用してくれないと損じゃない?

少なくとも自分はそういう主義なんだから

「うーんと、何を話そうかな」

あなたは今不安があるわけですよね?」

めまいって二通りあって、ぐらぐらとぐるぐるがありまして、そのうちぐらぐらの人が来るとする」

「そんじゃあどこかにつかまってごらん、と言うわけです。そうするとぐらぐらがちょっと良くなる」

「当たり前の事なんでして、支えがあるとふらつきは楽に感じるわけですね。それで回復を待った方が得じゃない」

あなた不安なんですよね」

あなたが船だとして、風が吹くと波が起きて不安定になりますよね。風は職場のことだったり家族のことだったりするんでしょう」

「船が小さくて不安なのだから一生懸命大きな船になろうと努力する。そういう人が多いような気がします。みんな真面目なんですね。あなた最初僕にそのことをおっしゃらなかったからなるべく自分で解決しようとしているんだな、っていう印象を持ちました。でもいったんドックはいらないと船を大きくは改造しにくいでしょ?ちょっと安定させた方が良くない?」

「ちなみに僕は人間ドックは嫌いなんですね。彼らはそういう役割はしないから勘違いしないでね。ドックのあとにカウンセリング時間がある場合はいいです。1万円ぐらいのオプションカウンセリングがついているドックはあるのですが、それは良いと思うけれど、これは余談です」

「ああ、それで沢山のロープで固定した方が安定しますよね、船。水はぬいてないとして」

「そういう支えっていっぱいあったほうが良いと思うんです。血縁の方でも良いんだけど、ときどきそれではだめ、って時もあるでしょう?」

「もちろん信用できるお友達もおられるでしょう」

精神科先生はとっても支えて下さるでしょうね」

「でも内科もちったあ役に立ちますよ、って事」

「これから残りの検査しますけれど、なんとなく異常がない、みたいな言い方はしません。こういう理屈あなた大丈夫である、この病気にはなりにくい。そういう事を申し上げる予定。そういうのがあなたに役立つとうれしいです」

「いろんな不安があるときには、どうぞつかまっちゃってください。つかまられた方が単独で立っているとふらふらするんですけど、人間社会ってそうじゃなくてまた別の人とつながってますからね。本当は電車の中だってお互いに手をつないじゃえば安定するんだと思うんですけれどね。まあそれは見ているときっと可笑しいですよね。でもそうやって支えあうと安定するんだと思うんですよね。内科には全身のことを話してください、からちょっと話がそれてしまって申し訳ないんだけれど、まあ来ちゃった以上は利用した方が得ですよ、って話です。じゃあ次の検査しますよ」

  • 医者と患者って、本当、相性だよねえ 俺はこんなにゴチャゴチャ言われたら嫌になってこっそり医者変えるわ こっちにすれば、不利益承知の上で、話したくないから話さない事もあるん...

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