たくさんの人の叫び声を受けながらお仕事するのは、大変なことと思います。
いま、デモ隊を通さないために、あなたが同僚の方々とバリケードを組んで立つとき、あなたはどんなことを考えているのでしょうか。
あなたを取り囲む人があびせてくる罵詈雑言を心に入れないように、きっとあなたは心を意図的に硬くして、閉ざしていることでしょう。
あなたがいまやっていることはあなたの仕事なのだから、感情を入れずにやりきれば、この瞬間は過ぎ去るのだし、あなたはこのあともまた仕事を続けていけると思っていることでしょう。
しかし、あなたは、いま、どのような歴史の瞬間に、自分がどのような役割を果たしているか、お気づきでしょうか。
それがあなた自身の人生にどのような意味を持っているか、お気づきでしょうか。
人の流れをせき止めて、荒々しい人たちの行動を止めることで、あなたは市民の安全を守っているのだと、上司の方から聞かされているし、きっとあなたもそう思っていることでしょう。
あなたは大義を果たし、自分の良心にやましいところなど、かけらもないと思っているかもしれません。
でもそれは、残念ながら、今回に限っては、間違いです。
あなたはいま、この瞬間に、自由を求めている人たちを、抑圧しています。
あなたはいま、この国がファシズムにまた戻ろうという歴史的な瞬間に、ファシズムに加担しています。
いったい、あなたはそんなことをするために生まれてきて、警察官になったのでしょうか。
あなたがまったく気づいていないとは、どうしても思えないのです。
あなたの前に立ちふさがる人たちの身なりや、その本気さが、いつもの「プロ市民」たちによるデモとは違っていることを、あなたは敏感に感じ取っているはずです。
だからこそ、あなたの前に立ちふさがる人たちに、あなたがかけた言葉は、いつもよりも丁寧なものだったのではありませんか。
きょう、あすは、あなたは自分の職務を果たしたと感じて、安らかな心持ちで眠ることができるかもしれません。
いま国会で行われていることは、1世代の間に、かならず厳しい歴史の裁きを受けます。
そのときあなたは、自分のやっていたことをどのように思い出すのでしょうか。
あなたがご家庭を持ち、小さなお子さんがいらっしゃる場合、大きくなったお子さんに、あなたの仕事をどのように説明するのでしょうか。
あなたはご自身の職務を果たし、市民の安全を守ったのだと、胸を張って説明するのでしょうか。
いま、あなたが通せんぼしている人たちや、あなたが取り押さえた人たちは、あなたのその顔を無数のカメラで撮影し、ネット上にアップロードしています。
それはいつまでも残るでしょう。
それを何年も後に見つけたお子さんは、あなたがどのようなことをしていたと思うのでしょうか。
これからあなたを裁く人たちの評価を前にして、あなたは自殺せずにいられるでしょうか。
きょう、あなたにあらっぽいことばをかけてくる人がいるでしょう。あなたは腹が立つでしょう。
あなたの前に立っている人は、あなたが体現しているものに対して、怒っているのです。
その中にはあなたも含まれているのです。
だからあなたがいまやっていることは、仕事だと割りきってごまかすことは、絶対にできないのです。
しかし、役割を離れれば、あなたもわたしも、同じ人間であるはずだと、わたしは確信しています。
どうか、ご自身のやっていることを、もういちど振り返ってみてください。
いま、命令に逆らうことはできないかもしれません。
しかし、あなたのいまやっていることが、ほんとうにあなたの良心にてらしてやましいところがないかどうかは、あなたにはかならずわかるはずです。