例えば10年かけてナチュラル(お薬を使わずに)で筋肉を大きくしたとする。
そこにアナボリックステロイドを使って2年とか3年で同じくらい、もしくはもっと大きな筋肉をつけた奴が出てくる。
そしてそいつは別にアナボリックステロイドを使って筋肉を大きくしましたとは言わない。
そうすると周囲から「10年もかけてあの身体、プププ」みたいな声が出てきたり、
周囲が言わなくてもやっている本人も自分の努力の価値が少し落ちたような気になってしまう。
「俺の10年とは……」ってどうしたってちょっとはなっちゃう。
比較しなきゃいいじゃんって言うのは簡単だが、そうするのはとても難しい。
ナチュラルで作った身体で「この身体になるにはこういうトレーニングやサプリを使うんですよ」と話す。
ステロイドユーザーがもっと立派な身体でお薬のことは隠して「この身体になるにはこういうトレーニングやサプリを使うんですよ」と話したとする。
周囲から見てる人からすればより立派な身体をしている人の言うことを聞きたくなる。
でもその身体になるのに最も大事なのはトレーニングでもサプリでもなくアナボリックステロイドなので、
そしてうっすらと「お薬を使って体をデカくしている奴がいるらしい」という情報が漏れ出てくる。
でも誰も「私はお薬を使って体をデカくしていますよ」とは言わないので、
ナチュラルで筋肉を大きくした人間が「そんなに筋肉が大きいのはお薬使ってるからですよね」と言われたりする。
暗に「あなたは努力じゃなくてお薬で筋肉をデカくしたんですよね」と揶揄される。
アナボリックステロイドを黙って使う人間は使わない人間の筋肉や努力を相対的に毀損している。
個人的には自分で宣言してアナボリックステロイドを使う分には自己責任だと考えている。
筋肉を付ける過程よりも、付いた筋肉にのみ価値を感じて筋肉のデザインだけを楽しみたいから
アナボリックステロイドを使ってボディメイクをしたいんだ!という需要自体はあっていいとは思う。
純粋に「違う世界の人間なんだな」と思うだけで、自分と比べることもしない。
これはAI絵師に対する現行の絵師の「お気持ち」に似てるんじゃないかなと思う。
※著作権法に関するところは別で、絵師が抱えているモヤモヤした気持ちのほうを対象にしている。
AI絵師が出力した絵がAI絵師が出力したと言わずに出てきた時に、自分よりも上手だった場合、
どうしたって周囲の視線を気にしてしまうし、自分に対して情けない気持ちになることもあると思う。
また自分で絵も描いていないのにAIで出力した絵でいいねを稼いで
「お絵描きの」ノウハウやタブレットやソフトを販売しているような人がいたら、やっぱりそれは違うと思う。
そして長年努力して作り上げた絵柄や技術に「AIで描いたんですか?」と言われて嬉しい人間はいないだろう。
個人的にはイラストAI自体はそんなに悪いものではないと思っている。
黙って自分の中で「誰か書いてくれないかなー」と思って待ってただけの人たちが